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「信じられないって顔だね」
「だってドラケンはそんな事ッ！」
「アイツは覚えてないよ。私が何をしたのかもどんな奴だったのかも…」
ケンケンには空白の5年間がある。ソレは彼自身も気づいていない。
そうしたのは…紛れもなく私だ
「私の父親はさ気に食わない事があれば直ぐに暴力を振う奴だった。でもだからと言ってソレが憎いと思った事はない。物心ついた時からソレが私の当たり前だったんだ」
私はガキだと思えないほど冷酷だったと思う
母が泣き喚く姿を見ても悲しむ事なんてなく…ただあんな風になりたくはないと思っていたのだから
「私さ全てどうでも良かったんだよね。誰かが傷つけられていようが本当どうでも良かった」
成長と共に育つはずの感情が私には欠落していた
苦しみも幸せもない世界…ソレが一体どれほどつまらないものかは本人にしか分からない
空も街も花も私の目には灰色に映っていた
「そんな私の前にケンケンは突然現れたんだ」
あの日の事はよく覚えている。
“貴方の弟よ、面倒みなさい”
母はそう言って私に赤子を手渡した。
まだ3歳やそこらだ、赤子が何なのか、人間なのかも分からない。
だが考える事も面倒だ。私は母に言われるがままケンケンの世話をすることにした
「ケンケンはさ私と違って喜怒哀楽が激しくてね…私が知らない世界を生きてるケンケンを羨ましいかった。誇らしくもあった…」
「A…？」
私が拳を握りしめた事に気づいたのかそれまで黙っていた一虎が心配そうに私を見つめた
「ソレが全ての始まりなんだ…私はケンケンを守ってやれる唯一の存在だと自惚れていた…誇らしかったのはケンケンじゃないそんな自分自身だったんだよ」
彼が私に助けを求める為に何かが満たされていった。
だからもっと…もっとケンケンの役に立ちたいと思った
「馬鹿だよね。私…英雄になりたかったんだ」
「え？」
一虎が混乱するのも無理はない。
先程否定した筈の言葉を肯定したのだから
「感謝されたかった…永遠に必要な存在になりたかった…だから私は!」
話に夢中になりすぎた私の強く唇からは血が滲みだす
「もういいよA！それ以上言わなくても！」
「…駄目だ」
口の中に鉄の味が広がり
あの日の光景が目の前に甦る
「そして6歳の時…私は英雄になる為に父を殺した…」
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作成日時：2022年3月2日 3時
