i 騙すように【HUNTER×HUNTER】 (ページ10)

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8.イルミページ10

｢あーあ、外部で友人なんか作るならもっとちゃんと姉さんを見張っておけばよかった。｣

クルクルと指先で針を回すイルミ
思考の読めない弟の漆黒の瞳に見つめられる。

｢まあ、どうしても出ていくって言うなら俺は姉さんを殺してでも止めるよ。｣

｢あ、それともその友人とやらを殺そうか。姉さんをそそのかす悪い男だ。｣

｢イルミ。｣

｢俺は本気だよ。｣

姉として、弟に殺気を向けるなんてしたくない
それでも初めての友人を侮辱された怒りがどうしても漏れてしまう。

しかしイルミにも譲れないものがある。
たとえこの後最愛の姉と血みどろの戦いをして、手足の1本でももげようがこの家から姉を解放したくなかった。

｢姉さんはまだ1歳のキルにも責任を擦り付けるの？｣

キルアの名前を出されハッとする。
弟のキルアはまだ1歳、だがはっきりと父の血を継いでいた。私と同じ銀色の髪がそれを物語っている。

今私がいなくなれば、まだ1歳の弟がこの家の当主として厳しく育てられるのか？
私が耐えてきたことと同じように。

一瞬、沈黙の時間が流れた

｢…降参、家を出るのは辞めるわ。｣

観念するように両手を上げる私にイルミは針を下ろす

｢あーよかった、姉さんとはやり合いたくなかったんだよね。俺の念も完璧じゃないしさ。｣

姉さんが賢い人でよかったよ、と頭を撫でられる。

｢(イルミには申し訳ないけど君の姉さんは大馬鹿なんだ。)｣

そう、今日のところは観念するだけ。家を出るのがダメならこっそり逃げ出してしまえばいい。
だが今はどう考えてもこの家を出て暮らしていくには準備が足りない。

｢(もっと時間が必要か。)｣

クロロには申し訳ないけど時間をかけて念入りに家出の計画を立てよう。
そしてキルアが物心着いてこの家のルールを理解できるようになった時、計画を実行するのだ。

｢(あー我ながら悪いお姉ちゃん。)｣