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プリンをゆっくり食べ進めながら一頻り泣いたところで涙は枯れて、お店を見渡すと、チョコレートをくれた男性はもう居なかった。
『……あの、先程は見苦しいところをお見せしてしまってすいませんでした』
カウンターの向かい側で洗い物をしている店員さんに声をかけると、優しい笑顔を向けてくれる。
「スッキリしました？」
涙は枯れたけど、気分は晴れてない。
だって、このお店を出てからのことを考えたら不安しかない。
「……心はまだ、って顔してますね」
『え？』
「お酒って飲めますか？」
『はい』
「じゃあ、ちょっとお付き合いしてくれません？」
洗ったばかりのグラスをチラつかせて、小学生が悪知恵を働かせた時みたいに笑う メガネをかけた店員さん。
席に着いて待っていると、目の前に出てきたのはクリームソーダだった。
店員さんも同じものを持って"失礼します"と向かいの席に座った。
「じゃあ、乾杯」
『か、乾杯……』
お酒の話をしていたから、てっきり……
「可愛い見た目だからって、飲みすぎたらダメですよ」
『え…？』
「これ、メロンソーダとバニラアイス、それにジン入れてます」
自慢げに笑う店員さんは童顔で、お酒なんて縁のなさそうなのに。
少し苦味はあるけど、アイスが入っているから凄く飲みやすい。
『あの』
「裏メニュー、サービスです」
『でもお兄さん、バイト中……』
「バイト？」
『はい』
「俺、何歳に見えます？」
『え？22とか、学生さんかなぁって……』
「フハッ！今年26になります」
『え、年上！？』
「お客様は……って、女性に聞いたら失礼ですよね」
『今年24になります』
"2個下か"と呟くと、年上に見えない店員さんが口角をあげる。
「あ、ちなみに」
『はい』
「俺 ここのマスターです」
『……え？』
「改めてご挨拶させてください。喫茶アルタイルのマスター、松倉と申します」
予想外の情報が入りすぎて混乱する。
バイトのお兄さんじゃなくて、この喫茶店のマスターで、しかも年上？
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作者名：愛生
| 作成日時：2022年9月25日 18時
