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『……っ、試さない！』
「俺とは嫌？」
『だって元太は同期だし、これからもずっと同期として大切にしたい』
「それってさ、俺のことフってる？」
ツラツラと、思っていることを口に出していた。
咄嗟の判断で出た言葉が、あまりにもその通りで。
酔った勢いで告白の返事なんて、申し訳なくて目が合わせられない。
気まずくなってしまった空気。
とりあえずお店を出ようと、元太は約束通り奢ってくれた。
お店を出て、少しだけ話そうと言われて、通行の妨げにならないような薄暗い路地裏で話す。
『……さっきはごめんなさい』
「そんな苦しそうな顔すんなよ」
『元太、あの』
「俺酔ってるからさ」
元太が顔を覗き込んできたと思ったら
一瞬、唇が触れた。
『っ、ね、今の……』
「こうしたら俺のことも考えてくれんの？」
『それは、』
「俺の事で頭いっぱいにしてよ」
両手で肩と腕を掴んでくる。
そのままどんどん接近してくる顔。
「ずっと言おうと思ってたんだけど」
またキスされる、そう思って反射的に目を瞑ると、耳に唇が触れて息がかかってくすぐったい。
「ここ、キスマだよね」
『……っ！』
隠れるようにできるだけ首元が開いていないブラウスを着て、コンシーラーで隠していたつもりだった。
さっき焼き鳥屋で食べる時に邪魔になると髪をまとめていたから、その時に見えたのかもしれない。
「ねぇ、別れたんでしょ？誰に付けられた？」
『それは、その』
「例のキスしてきた奴？」
元彼ともう1人なんて、言えない。
そんなこと言ったら軽蔑されそう。
「ねぇ、俺も付けていい？こんな誰かが付けたキスマあんのムカつく」
『ね、元太何言って、』
「いいでしょ？」
耳から首にかけて何度か軽くキスをされて、痕の場所に舌が這う。
……ダメ。
ダメだよこんなの。
ここで流されたら、私の本当に心許している人が周りからいなくなっちゃいそうで。
元太との今の関係性を崩したくない。
『……や、ダメ！』
「なに」
『ごめんなさい』
「何に対してのごめん？」
『それは、言いたくない』
「中途半端な答えが一番傷つくんだけど」
『でも、』
「言ってよ。正直俺の事どう思ってんの」
『……その、上手く言えないけど、今のままの関係性で居たいなって、思ってる』
そう言うと、元太の手は肩から力無く離れた。
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作者名：愛生
| 作成日時：2022年9月25日 18時
