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「あれ、まだ2時じゃん。どうしたの？」
『なんでもないです』
「なんでもなくないでしょ」
『なんでもない』
「じゃあなんで目逸らすの？」
『……それは、』
「Aちゃん、こっち見て？」
逸らした目線をゆっくり戻すと、ソファーから起き上がった松倉さんはニコッと微笑んでくる。
『……もう、逸らしていいですか？』
「ダメ」
『どうして、』
「さっきまで何考えてたか教えて？」
『そんなの……』
"松倉さんの恋愛事情について勝手に考えて、何故か唇に触れたくなってました"
なんて、引かれそうで言えるわけない。
「言えないこと？」
私が頷くと、松倉さんは私の頬に手を伸ばす。
『あの、』
「なに？」
松倉さんが触れてる度に、緊張して身体が硬直する。
触れてくることに、何か意味があるのかは分からない。
平気な顔をして私をジーッと見つめてくる。
『……なんでもないです』
「ふーん、本当に？」
頬からスルスルと唇に指が移動する。
親指で右から左、左から右とずっと唇に触れている指。
熱を持った目。
……緊張して、息が止まりそう。
『……っ、』
「さっき、唇に触れようとしてたのに？」
唇に指が触れた状態で話せるわけがなくて、黙っていると、唇から後頭部に移動する手、
ジリジリと近付いてくる顔。
「……ねぇ、何しようとしてた？」
そんなことを聞きながら、逃がさないように右手で後頭部、左手で肩を掴んでいるのは松倉さん。
逃がす気なんて、きっとこの人にはない。
『ま、つくら、さんっ、』
「ん？」
『……心臓、破裂しそう』
「ふふっ、そっか」
『ね、』
「なに？さっき考えてたこと話す気になった？」
『違う、けど、その……、』
「はい、時間切れ」
『……ﾝｯ、』
さっきの寝たフリの時の一瞬のキスとは違って、少し長く触れる。
唇が離れると、さっきよりもっと熱を帯びて吸い込まれそうな目の松倉さんと目が合う。
「……もう1回、する？」
話す度に動く唇。
触れたい。
「したいって顔してるけど」
そんなの欲求不満みたいだし、言いたくない。
でも、何故か凄く触れたい。
もうお互い酔いは覚めているから、お酒のせいにはできない。
寝ぼけたフリもできない。
だけど、
「いいの？しなくて」
『松倉さん、』
「ん？」
『……もう1回』
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作者名：愛生
| 作成日時：2022年9月25日 18時
