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『松倉さん』
ベッドで布団にくるまっている松倉さんに、小声で声をかけるけど、反応がない。
『起きてますか……？』
やっぱり反応がない。
そりゃあそうだよね、お仕事で疲れてて先に寝たんだもん。
そう思っていると、ゴソッと動いた。
「……ん、どした？」
声が少し枯れていて、寝ていたことがわかる。
申し訳ないことしちゃったな。
『お休み中にごめんなさい。なんか、ちょっと……』
「寂しい？」
どうしてこの人は、私の求めているものをこうも簡単に言葉にするんだろう。
私がゆっくりと頷くと、薄暗い中で優しく笑うのが見えた。
「いいよ。ここおいで」
布団を捲ってくれて、空いているスペースに松倉さんと向かい合わないように寝転がる。
『私はソファーで寝るルールなのにごめんなさい』
「ずっと同棲してたんだから、寂しくなるのは仕方なくない？何か減るもんじゃないしいいよ」
『でも、ルール破っちゃいました』
「明日書き換えよっか」
『なんて変えるんですか？』
「見てからのお楽しみ」
シングルベッドだから、話すと息が首元にあたって少し擽ったい。
松倉さんの方を向くように寝返りをうつと、すぐに目が合う。
『あの、』
「ん？」
『……また、いいですか？』
頭、撫でてほしい。
なんて言えないけど、一言だけで通じたみたい。
「寂しがり屋だし、甘えん坊だよね」
私の頬に手を添えて、親指で撫でてくる。
『っ、ごめんなさい。やめます』
「違う、可愛いって意味」
『え？』
「言ったでしょ？減るもんじゃないって」
向かい合って、距離がゼロになる。
さっきまで寝ていたからか、松倉さんの身体は温かい。
「安心できるなら抱きしめるし、なでなでもしてあげる」
『……いいですか？』
「ふふっ、いいよ」
撫でられるととても落ち着けて、すぐに眠りについた。
朝起きると、ルールを書いた紙には
"寝る時は松倉さんはベッド、私はソファーを使う"
※時と場合による
なんて、シンプルに米印で追記されていた。
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作者名：愛生
| 作成日時：2022年9月25日 18時
