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『まだいたんだ』
「さっき言い忘れてたことあるから」
エレベーターの上の階へ行くボタンを押す。
やっぱり朝イチでまだ誰も来ていないのか、扉がすぐに開いて、2人で乗り込んだ。
「あのさ、家のことなんだけど」
『ん？』
「やっぱ泊まりなよ、俺ん家」
『いい』
「俺さ、」
"7階です"とエレベーターのアナウンスが流れて、目の前の扉が開く。
私の部署の階だから降りないと。
何歩か進んで、何かを言おうとしていた元太を振り返って見ると、扉を開くボタンを押しながら何だか思い詰めた顔をしている。
「…や、なんでもない」
『なに？朝からモヤモヤしちゃうじゃん』
「自分で聞いといて後悔すんなよ？」
『わかった』
一瞬、空気が変わる。
元太の目が、獲物を捉えたような、そんな熱を持っている。
「お前のこと好きだから、チカラになりたいなって思ってる」
『……え』
「じゃ、何かあったら連絡して。俺ん家ならいつでも泊まっていいから」
そのままゆっくり閉まるエレベーターの扉。
『なに、今の……』
朝から悩ませないでよ。
聞いた事、後悔するに決まってる。
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彼氏と別れて、行きつけの喫茶店のマスターの家に泊まって、同期に何故か告白されて……
何してるんだろう、私。
なんだか頭が回らなくて、仕事もあまり上手くこなせなくて。
退勤後、とりあえず1泊だけ予約したホテルへ荷物を持って向かう。
今日は土砂降りなのに、荷物が多くて傘はさせなくてびちゃびちゃ。
ホテルまではそれほど長い距離ではないから、ひたすら荷物を抱えて歩く。
通り道にはあの喫茶店。
……松倉さんに一言お礼してから行こうかな。
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作者名：愛生
| 作成日時：2022年9月25日 18時
