雨の日のアルタイル (ページ1)

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「いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ」

レコードがくるくると回って、針がその上を走る。

レトロな音質の音楽。

ダークグリーンの壁紙。

ボルドーの椅子。

店内を優しく照らすペンダントライト。

通勤路を少し入ったところにある喫茶店。

店内の明かりが暗いからか、外からは何も見えなくて、ずっと気になっていたものの入りにくかった。

インターネットで調べてみたら、昔ながらのプリンが美味しそうで

今日はプロジェクト成功のご褒美にと、仕事終わりに初めてお店に入った。

外は雨だけど、気分は快晴。

お客さんは私ひとり。

店員さんはメガネをかけたアルバイト中らしき男性がひとり。

店内は奥行きがある作りで、左側に4人掛のテーブル席が4卓、人が通れる隙間を開けた右側にカウンター席があった。

一番奥のテーブル席が良いけど、ひとりだったらカウンターの方がいいよね。

「この時間だと殆どお客様はいらっしゃいませんので、よろしければ広いお席をお使いください」

『いいんですか？ありがとうございます』

席を決めかねていた私に声をかけてくれた、見るからに優しそうな店員さん。

店員さんの言葉に甘えて、1番奥のテーブル席に壁を見るようにして入口側に座った。