恋は街中に降り注いでいる２ (ページ28)

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「俺ぶっちゃけアートに疎いからお前が描く世界観をちゃんと理解しきれてるわけじゃないけど、好きなことを仕事にしてちゃんとやり切る千賀は凄いと思うよ」

「…………」

ニカがちゃんと言葉にして褒めるなんて珍しいから黙ってしまった。

「何か言ってくれよ」

「だってニカがはっきりと褒めてくれるから。明日雪が降るんじゃない？」

「お前に頑張って欲しいからちゃんと言ったのに何それ」

「ありがとう、ニカ」

「痒いわあ」

そういえばオブジェのときもニカがお前のやりたいようにやればいいんだよ、それで駄目だったら俺たちが、いや俺がフォローするって言ってくれて肩の荷が下りてオブジェを作り上げることができた。

「やりたいように、シンプルにか……」

今俺が描きたいのは。
キャンバスを見る。
今俺が描きたいのはこんな色じゃない。

俺は新しいキャンバスを用意する。
そして水色の絵具を手に取る。

「千賀？」

「ニカ。ありがとう」

「何だか分からないけど、お前すっきりした顔してる」

「見えてきた」

俺の伝えたいことは、表現したい色が見えてきた。
ごちゃごちゃ考えずに自分の気持ちを乗せればいい。
当たって砕けろだ。

「じゃあ俺帰るわ。ちゃんと楓さんのたまごサンド食べろよ」

「分かってる」

俺はたまごサンドを一口かじる。
今日も美味しい。
そして筆を持ち、キャンバスに色を付けた―――。

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