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ある日、旦那様に呼び出された。
どうやら奥様からの縁談を有耶無耶にしたことで逆鱗に触れたらしい。
「失礼いたします」
「渉。……こっちに来い」
すぐに旦那様の近くにまでいく。
「お前、彩乃からの縁談無視してるみたいだな」
「……申し訳ございません。まだ結婚だとかは考えていなくて……」
「何故だ。良いお嬢さんを揃えたつもりだが」
写真だけで良いか悪いかなんて判断できない。
やっぱり俺にはA。
「お付き合いしてる人でもいるのか」
「います」
Aとは言えないものの真っ直ぐ伝えてみる。
「横尾家は代々渡辺の家に仕えている。そして渉はAの教育をしてくれたから、より良い縁談をと彩乃と思ってたのだが……どんな人なんだ、付き合っている人は。屋敷内の人間か」
「……あまり掘り下げられると。相手にも失礼でございますし……」
縁談は消えたかと思ったのに、探られるのは困る。
このまま引き下がって欲しいと思っていたら、旦那様は鼻で笑われた。
「とか言って、Aだろ?」
「…………」
明らかに動揺しないように拳を握る。
「陰でこそこそと。私に教えてくれた使用人がいたよ。飼い犬に手を噛まれた気分だ」
「…………」
そのときノックなしにドアが開かれた。
嫌な予感がして、そこを見れば、やっぱりAだった。
「お嬢様、今は……」
「A、何の用だ」
旦那様は大胆不敵に笑う。
A、今は駄目……。
「私、渉と……」
「今その話をしてたんだよ、渉と」
「えっ……」
完全にバレてしまった。
俺たちはどうなるんだろうか。
「陰でこそこそと。私をコケにして。まさかA、渉と結婚したいとか言うんじゃないだろうな」
「……私は、結婚するなら渉がいいです」
「そんなもの出来るわけないだろう」
旦那様が拳で机を叩く。
「何でよ」
「それはお前が渡辺家の人間だからだ」
怒号が部屋に響く。
「うちは何代重ねてると思ってるんだ。お前が今何不自由ない生活を送れるのは先祖たちが苦心してきた結果だ。その先祖たちは様々な人脈を作り上げるために自由を犠牲にしてきた。もちろん私もだ。渡辺家はまだ大きくなれる余地がある。お前もここの人間なら家のために行動しなさい」
旦那様の力説に息を飲む。
圧倒される。
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作者名:ユタカ2 x他1人 | 作成日時:2021年9月11日 17時