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「年下の男にだいぶ本気なんだな。旦那の穴埋めじゃねえんだ」
「違う。……北山くんだってそうじゃないの？奥様じゃなくて菱田さんが本気の相手だったんでしょ」
「……だな」
心がズタズタに露になっていく。
彼は可愛がってくれる、綺麗だって愛してくれる。
本当に私が欲しいものをくれる。
だから離れるなんて発想が浮かばない。
でもそれは倫理に反したこと。
「とにかく俺はボロボロになるお前や社員を見たくないわけよ」
エレベーターが止まる。
北山くんはじゃあなと言って下りていった。
そんなことがあり、岐路に立たされている私の所に夫が帰ってきた。
その晩はアメリカ帰りの夫を労うために美味しいお酒を奮発して手料理に力を入れた。
夫は上機嫌に野望を語った。
私は黙ってそれを聞いた。
今まで楽しく聞いていたはずなのに、今はとてもつまらない。
俊哉くんは私の話を尊重して聞いてくれて、彼の話も興味深く聞ける。
私は溜め息を飲み込んだ。
夜も深くなっていくと夫はこう言った。
「そろそろ子供欲しくない？」
「子供？」
「そう。俺たちってずっと仕事を優先してきたけど、そろそろ家庭を築いてもいいんじゃないかって思って」
夫との子供。
想像力を働かせてみる。
そんな私の脳裏にある事が閃いた。
これはとてもハイリスクなこと。
でもやってみる価値はある気がしてきた。
「もちろんAが仕事をしたいなら……」
「そろそろセーブしたいと思ってたんだよね。今のままだと上がつかえててさ……」
私は心を痛めずに嘘を吐けるようになった。
確実に悪魔が私に囁く。
私は地獄の道を行く。
彼は一緒に来てくれるだろうか。
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作者名：ユタカ２ x他1人 | 作成日時：2021年9月11日 17時
