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2学期に入れば文化祭の準備が急ピッチに進む。
私たちのクラスは執事・メイド喫茶をやることになった。
というわけで私たちは今クラス全員の服を手分けして縫っているところだ。
予算が潤沢にあるわけではないので、手作りでやるしかない。
被服室でミシンを使えるのがありがたい。
男子のタマ、ニカ、千ちゃんも丁寧に縫っている。
特に千ちゃんは手先が器用だから上手だ。
「三人が執事服着たら盛り上がりそうだね」
「うん、三人目当てで来る人多いからメニュー量多くしないとって実行委員が言ってたよ」
「やっぱ1番人気はタマだろ」
「俺？写真部が盗撮してその写真を売られるのがオチ」
「そんなことしてるの？」
私は驚いた。
肖像権をまるで無視じゃないか。
「そう。ニカや千ちゃんのもあるって」
「えー」
「それ俺たちにも何円か欲しいよねえ」
「俺たちよりも女子3人のメイド姿楽しみにしてる奴もいるよ」
「私も含むの？」
清楚系美人のかんなやギャル系美人の文乃はともかく私？
「含むだろ。Aの見てる鏡は歪んでるの？」
女子よりも可愛いんじゃないかと言われるタマから言われるとそうなのかなという気がしてくる。
そんな他愛のない話をしていたら。
「お疲れ。順調に進んでる？」
宮田先生がやって来た。
何やらビニール袋を持っている。
「進んでるよ。宮っちどうしたの？」
文乃が尋ねると袋を上げて。
「安物で悪いけどアイスキャンディーの差し入れ」
「宮っち太っ腹」
「ありがとう」
群がろうとする5人の後ろで待っていたら。
「一ノ瀬さんはどれにする？」
そう言って二つあったうちの一箱を見せてくれた。
「じゃあ、これで」
私はグレープ味を選択した。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。他のクラスの人には内緒ね」
そう言って宮田先生はいなくなった。
9月になっても残暑が厳しいからアイスの差し入れは素直に嬉しい。
袋を開けてアイスをかじる。
「Aってさ」
ふとタマが隣にやって来た。
「宮っちのこと嫌い？」
「嫌いじゃないけど、何で？」
「いや、なんとなく」
タマはマンゴー味をかじった。
私もまたかじる。
「……どうやったらお前の意識に入れるのかね」
「何か言った？」
「何も」
私はタマの呟きが聞こえなかった。
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作者名：ユタカ２ x他1人 | 作成日時：2021年7月6日 11時
