Episode14 ページ14
「あ、そうだ。忘れるところだった」
そう言うと、北山さんは自分のバッグをがさごそとあさり始めた。
「これ、Aさんのでしょ?」
彼が差し出したのは、私のハンカチだった。
「これ、あの時…」
「そうそう。スマホを拭く時に使ってましたよね?Aさんが店出て行った後、椅子の下に落ちてたから預かっといた」
「ありがとうございます。もしかして洗濯やアイロンがけまで?」
「あ…うん、まぁ…。アイロンなんて俺慣れてないから下手くそだけど…」
照れくさいのか、北山さんは頭を掻きながら俯いた。
「それ、可愛いね。クラゲ好きなの?」
そう尋ねられて、私は「え、えぇ…」と言葉を濁した。
「アイロンかけてる時に気づいたんだけどさ、そのハンカチ、あそこの水族館で売ってるやつだよね?」
北山さんは都内のとある水族館の名前を口にした。
その瞬間、サトルの顔が脳裏に浮かんだ。
サトルと初めてデートした場所。
それが水族館だった。
「初デートに水族館なんて、ちょっとベタすぎるかな…?」
チケットを購入しながら、サトルはちょっと恥ずかしそうに笑ってみせた。
私が「そんなことない。嬉しい」と言うと安心したように笑った。
初めてつないだ彼の手は骨張っていて大きくて、とてもドキドキしたのを覚えてる。
優雅に泳ぐクラゲに心奪われ、ガラスに張り付くようにしてずっと見ている私を、サトルはかわいいと言った。
そして水族館を出る直前、いつの間にか館内のショップでたくさんのクラゲが描かれた水色のハンカチを買ってきて、「プレゼント」と差し出した。
「子どもじみてるかもしれないけど、今日の思い出に…」と微笑んだ。
「ずっと大事にする」と言ったら、「俺はAのことをこれから先ずっと大切にしていく」と言って抱きしめてくれた。
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SaYaKa(プロフ) - yndreamv0mm0vpqさん» コメントありがとうございます!!たくさんドキドキしてもらえるように頑張ります^ ^ (2018年8月2日 7時) (レス) id: d50237b6e9 (このIDを非表示/違反報告)
yndreamv0mm0vpq(プロフ) - 今後の展開がすごく気になります。2人はどのようにして再開し、恋に発展して行くのか。ドキドキ。楽しみにしています。 (2018年8月1日 18時) (レス) id: 59b8f94fa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SaYaKa | 作成日時:2018年7月31日 1時