保健室のモトキ先生

Karte14 ページ18

『Aちゃん……』

部屋の中にはシルクとマサイはいなくて、
彼女の悲しいような後悔したような背中だけがある。
声を掛けてもこっちを向いてはくれない。けど

「…先生。ごめんなさい。」

その切ない声だけが部屋に響く。
謝るべきは彼女じゃない。

『俺がちゃんと答えなかったのが悪いんだよ。
だから…こっち向いて？』

「私…先生にどんな顔向ければいいか分からない…
勝手に怒って…飛び出して…挙句に倒れて運ばれて……」

また先生に迷惑を掛けた。先生のお友達にも。
と続けた。俺もあいつらも迷惑なんて思ってないのに。

『…本当に迷惑だと思ってたらすっ飛んで来ないよ』

「っ……」

すん、と鼻を啜る音が聞こえる。
どうやら俺はまた彼女を泣かせてしまったらしい。

『最近俺、会う度にAちゃんのこと泣かせてるよね…
ホント…ダメな男でごめん……』

「！先生は…っ、悪くない!!」

彼女が振り向いた。
ボロボロと涙を零しながら。

『…やっとこっち向いてくれた』

しまった、とでも言いたげに顔を逸らす君。
こんな可愛い人を泣かせてしまった俺はやっぱり最低だ。

「……私…ほんとに先生のこと好きだよ…？」

『うん。知ってる。』

「先生といる時が…1番幸せだよ……？」

『うん。ありがとう。』

目を合わせないまま言葉を繋げる君。
俺は、なんて答えようか。

「困ること言って、ごめんなさい」

『ううん、困ってないよ。
でもねA、気持ちは嬉しいんだけど……』

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