Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》 (ページ8)

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Episode38 -8 ページ8

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自分で口にしたのにこの状況でもまだショックを受ける私は次の言葉が続かない。

その間に、二宮さんの目は翔さんに向けられてしまった。

「助けてって翔ちゃんが言ったんだよ？俺は忘れてない」

「……カズ」

自分の顔を包む二宮さんの手に引き寄せられるように翔さんが力のない目を二宮さんに向ける。

二宮さんは私に向けた冷たい表情とは比べ物にもならないほど優しく、にっこりと笑って見せた。

「全部翔ちゃんとの約束のためだよ。言ったでしょ、俺が助けてあげるって」

「……カズ」

翔さんはまだゆらゆらと瞳を揺らしていた。

私は冷えていた手のひらをぎゅうと握りしめる。

何度も、翔さんに助けられてきた。

何度も、翔さんに守られてきた。

いつでもみんなの王様だった、翔さんを守ってきたものは、なんだったのだろうか。

それは二宮さんの過剰すぎる愛情かもしれないし、翔さんの周りにいた松本さんや亜理紗ちゃん、理子さんのような人の温もりだったのかもしれない。

けれど、今翔さんを守れるのは私しかいない。

王様が、何にも傷つかないわけじゃない。

心を閉ざしていたからって、何も感じないわけじゃない。

翔さんを、失っちゃいけない。

私は自分を奮い立たせる。

大丈夫、ナイフはもう床に転がっている。

私は震える唇でなんとか息を吸い込んだ。

「翔さん、私の声を聞いてください」

「ちょっと戸羽さん、」

「A…？」

ふっと、翔さんがこちらを向く。

その目に私が映って、酷く安堵する。

私はなるべく翔さんを落ち着けるように笑顔を浮かべることを心掛けた。

私が翔さんの笑顔を見ると落ち着くように、翔さんにも、少しでいいから安心してもらいたかった。

「私は翔さんが好きです。昔何があろうが、女性が嫌いだろうが、そんなことは関係ありません。翔さんが翔さんだから、好きです」

「チッ、邪魔しないでよ戸羽さん」

うざったるそうに二宮さんが私を睨む。

けれどその目はすぐに翔さんに向いた。

「翔ちゃん、翔ちゃんを守れるのは俺だけだよ。ずっとそうしてきたでしょ？」

翔さんに目を合わせて声を掛ける二宮さん。

その手の中で翔さんがまた私の方を見た。

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