Episode42 大丈夫だよね ページ35
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目覚めは思いのほか悪くなかった。
むしろ、翔さんに別れを告げなければならないと思い悩んでいた時よりもすっきりしているくらいだ。
時刻は目覚ましの鳴るほんの少し前。
ベッドの中で起き上がる。
周りを見渡して、そこが自分の家であることを思い出した。
翔さんの部屋にいたのがついさっきのことのようにも感じるのに、ここにはもう翔さんはいない。
独りぼっちの私の部屋。
チェストの上に置いた兄の写真が無言でこちらを見ている。
なんとなく、慰められているような気がした。
起き上がって朝ご飯の準備をする。
パンを焼きながら、冷蔵庫に昨日の残り物が何もないことに気が付いた。
「そっか」
それもそのはず、昨日はあの後夕飯をごちそうになってから帰ってきたのだ。
泣くのを堪えてばかりいたから正直味はあまり覚えていない。
病み上がりの翔さんの身体に優しいものをと思って頼んだメニューだったから、翔さんとお別れした直後の私の喉もちゃんと通ってくれた。
「いただきます」
一人で朝ご飯を食べるのなんていつものことなのに、無性に肌寒い気がしてフリースの袖をこすり合わせた。
今日のお昼は柚木に食べに行こう。
そうだ、少し早く家を出ても、キッチンカーに雅紀くんはいるよね。
そしたら長く話せるかな。
……いつ、話そうかな。
雅紀くん、私と翔さんのお付き合いをとても喜んでくれていたから、報告するのはちょっとはばかられる。
だけど今の私は、一刻も早く雅紀くんに会って、大丈夫だよって言ってもらいたかった。
やっぱり、スッキリはしていないかもしれない。
すっきりしていたのはたぶん、長く寝たからだ。
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iCHiKA(プロフ) - ともさん» 少しずつ伏線回収していきますので、しばしお待ちくださいませ。 (2020年12月8日 22時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - こんばんは。え、えー(;−ω−) (2020年12月4日 19時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:iCHiKA | 作成日時:2020年12月4日 17時