Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》 (ページ33)

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Episode41 -9 ページ33

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「っ、」

鼓膜を揺らすのは、酷く優しい声。

大好きな人の、柔らかな声。

さっき一度飲み込んだ涙が喉までせり上がってくる。

「もう、こんなに触れるつもりなかったんだけどな。……お前が俺の身体を触ったりするのが悪い」

「それは……だって……」

もう、お別れを言わないといけないと思っていたから。

言葉にはできなかった私の声なんて、翔さんはまるで知っているような顔をする。

「離れがたいのは一緒か」

「……はい」

翔さんの手が頬から離れていく。

とっさに、私はその手を掴んでいた。

「A？」

「すみません、つい……」

でも、離さない。

ちゃんと掴んで、その熱を感じるように。

「……私、自分から言わなきゃって思ってたのに、先に言っちゃうのはずるいです」

「………こんなの、女に言わせるわけにいかないだろ」

「そうですかね」

「そうなんだよ」

沈黙が落ちる。

部屋の空気は張り詰めるわけじゃなくて、柔らかいまま私たちを見守っているようだった。

「病院のベッドでずっと考えてた。今までのこと、これからのこと。俺はどうするべきか。どうすれば、お前を幸せにしてやれるか」

「あ…」

目が合う。

目力の強い瞳が私を逃がすまいと見つめている。

「俺にとってのお前は、なんなのか。答えを探して、ずっと考えていた」

「…私たちは似てるって言ったの、亜理紗ちゃんでしたっけ」

「？」

「ふふ、やっぱり、私たちは似てるのかなぁって思ったんです。……私もずっと、考えていました。翔さんのために私は何をすべきか。どうすべきか。ずっとずっと考えて、毎日毎日、翔さんのことばかりで」

「A……」

「考えれば考えるほど、翔さんが好きだなって、思うんです」

あぁやっぱり、我慢できなかった。

ちゃんと笑顔で言わなきゃって思うのに、喉が締まって声が震える。

涙が勝手に滲みだして、頬をツゥと伝ったのがわかる。

「……優しいな、お前は」

「優しいのは翔さんの方ですよ」

分かっていない、この人は。

自分がどれだけ優しくて、相手のことばかり考える人かを。

私のことを、どれだけ思いやってくれているかを。

「………俺はこれから残酷なことを言う。だから、俺のことは忘れろ」

翔さんの声がわずかに震えているように聞こえた。

私の幻聴なんかじゃ、たぶんない。

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