Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》 (ページ29)

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Episode41 -5 ページ29

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カチッカチッカチッとウインカーの音だけが聞こえる中私は窓の外に目をやった。

落ちかけた日がビルの向こうに消えている。

もうじき、今日という日もおしまいだ。

そう思いながら外を眺めていたら、足の上に置いていた手に手が重ねられた。

驚いて隣を見れば、翔さんがちらりとこちらを見る。

「文句ないだろ」

「……はい」

私の返事に満足したのか口の端を持ち上げると、翔さんは窓の外へと顔を向けてしまって表情は分からなくなった。

ただ、繋いだ手が滑るようにして指を絡める。

きゅっと握りなおされたそれに私も頬が緩んでしまって、翔さんにも二宮さんにもバレないようにとまた窓の外に顔を向けた。

街並みが後ろに流れていく。

「……」

だから、二宮さんがミラー越しに翔さんの顔を見つめていたことも、握った手を何か言いたげに見ていたことも、私にはわからなかった。

やがて車は翔さんが泊まるホテルのロータリーに滑り込んだ。

荷物をすべて降ろすと、二宮さんは「じゃあまたね」とだけ告げて去っていった。

「じゃあ行くか」

病院と同じように荷物を自分で持った翔さんは先に中へと入っていく。

それを追いかけながら、ここに来るのはずいぶん久々だなぁと感じていた。

部屋の中は以前来た時と大きな変化はなかった。

どさり、荷物をソファに投げると翔さんが私を振り向く。

「なんか頼むか、腹減っただろ」

「あ、そういえばそんな時間ですね」

反射的に見上げた時計は六時半を過ぎている。

ちょうど夕飯時だ。

「ルームサービスで悪いけど何でも頼んでいいぞ」

私にメニューを渡すと翔さんは荷物を広げてコードだのパジャマだのを取り出し始めた。

部屋の勝手がわからずそれを手伝えない私は大人しくメニュー表に目を落として、翔さんが好きそうな、けれど病み上がりによさそうな料理を探し始めた。

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