Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》 (ページ25)

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Episode41 神様というものがもしページ25

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目覚ましが鳴るよりも早く目が覚めた。

外は晴れているのかカーテンの隙間から眩しい光が筋になって部屋の中に入り込んでいる。

昨日の夜にあまり眠れなかった私の心とは裏腹にずいぶんとすがすがしい朝だった。

「お兄ちゃん、行ってきます」

今日は私にとって大事な日になるかもしれないから、祈るように兄の写真に声を掛けた。

家を出ると冷たい風が吹いて肩を震わせる。

春が来たとは言え朝の風はまだまだ冷たい。

家を出た目の前の道にはもうだれも待っていない。

一人、私はお店へ向けて歩き出した。

「おはようA」

「おはよう雅紀くん。ホットコーヒーちょうだい」

「はいよ」

柚木のキッチンカーに立ち寄ると雅紀くんがいつもの笑顔で出迎えてくれた。

いそいそとコーヒーマシンを動かしながら私に笑顔を向ける。

「櫻井さん、今日退院だっけ？」

「そう、夕方」

「そっか。……よかったね、A」

「……うん」

少しだけ悩んでから私は笑顔で頷いた。

雅紀くんにはあの後すべてを報告済みだ。

いつも過保護な雅紀くんだけど、その時だけは何も言わずに「Aに怪我がなくてよかったよ」と頭を撫でるだけだった。

もしかしたら雅紀くんなりに、私と櫻井さんの姿に想うところがあったのかもしれない。

「はいホットコーヒー。最近ココア飲まないね」

「え？あ、うん…そうだね。翔さんがいつもコーヒーだから、なんか慣れちゃって」

「あれま、櫻井さんの影響か。甘いの好きなA可愛かったのに、Aが大人になっちゃったな」

「なにそれ」

しくしくと雅紀くんが泣き真似をするからつい笑顔がこぼれる。

「なんてね、はいこれおまけ」

そう言って雅紀くんは私に向けて手のひらを広げた。

「あ、マシュマロ」

「そ。昨日買っといた。なんなら櫻井さんと食べたら？」

雅紀くんは得意げに言いながら私の掌に四つのマシュマロを転がした。

白くてふわふわしたそれが仲良く私を見上げている。

最近好きなものを買う余裕もなかったなと気が付いて、ほっとため息が漏れた。

「ありがとう雅紀くん。あとで食べるね」

「うん。今日も頑張って」

「はーい。雅紀くんもね」

「ん、行ってらっしゃい」

マシュマロを鞄に仕舞ってコーヒーを両手でつかむ。

じんわりと手を溶かす熱が、長い一日の始まりを告げているようだった。

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