Lillyの王様 ×seven×《ars/s.s》 (ページ18)

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Episode40 この道の先ページ18

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翌日の朝。

一人でお店への道を歩きながら私は空を見上げていた。

もうじきやってくる春本番を待つように空には穏やかな空気が満ちている。

風に流されていく雲がどこへともなく向かっていく様に、その先には何があるんだろうかと思ってみたりもした。

柚木のキッチンカーで買ったホットのカフェオレを飲み干してからお店の方に出る。

花の手入れをしながら、私は一つ息を吐いた。

明日は、翔さんの退院日である。

「ありがとうございました」

お客さんを見送って肩をぐるりと回す。

時計の針は十二時半を回っていた。

「お疲れAちゃん。昼行っといで」

「はーい」

智さんに返事をして一度奥へ引っ込もうとした私を、聞きなれた声が呼び止めた。

「Aちゃん、これからお昼？」

「え、あ…二宮さん！」

振り返れば入り口のところに二宮さんが立っている。

いつもと変わらない顔で、二宮さんは微笑んでいた。

「予定決まってないならランチに付き合ってよ」

「……ランチ？」

真意を測りかねてつい怪訝な声が出ると、二宮さんが可笑しそうに笑う。

「んふふ、何もしないよ。ただ……聞きたいこと、あるかなぁと思って」

作り物みたいに完璧な笑みを浮かべて二宮さんはそう言った。

誰だって、好きな人のために自分にできることは何だろうかと考える。

大切な誰かのために、自分にできることをしたいと思う。

その気持ちは等しく誰かを想う心に違いなくて。

本当は誰にも文句を言う権利はないのかもしれないと、ほんの少しだけ考えてみたりするのは。

それが私にも覚えのある感情だからかもしれなかった。

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