Episode27 唐突 ページ8
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その日は、良く晴れた青空が広がっていた。
また午後に百合を取りに来るという翔さんと別れて午前の仕事が始まる。
「Aちゃん。明日は仕入れよろしくな」
「はーい」
明日は早く起きなきゃなぁと思いながら智さんに返事をする。
朝の時間は静かに流れていた。
お昼前、お店にお客さんがやってきてちょうど百合の花束を作っていた私は「いらっしゃいませー」と声をあげる。
すぐに手元に視線を戻したら足音は真っすぐ私の傍まで近づいてきた。
「こんにちは、戸羽さん」
「あ、徳井さん」
名前を呼ばれて顔をあげると久々に見るお客さんの顔。
彼女はにこりと笑うと私の手元を窺いながら言った。
「お時間、大丈夫ですか？」
「もちろん平気ですよ。なにかございますでしょうか」
「よかった。実は、薔薇を買いたいんですけど」
「薔薇ですね、それでしたらこちらになります」
部屋の隅にある薔薇のコーナーへ彼女を案内する。
四季咲きと呼ばれる種類の薔薇はまもなくその花を咲かせるところだ。
華美な色合いだけでなく淡いピンク色なんかもそろって首をかしげてこちらを見ている。
中にはすでに咲いてしまっているものもあるけど、それはしっかりとした顔で私たちを見上げた。
「お好きなんですか？薔薇」
「はい。昔から。こないだ買いに来るってお約束したので、買いに来ました」
「ありがとうございます」
そんな社交辞令を覚えていてくれたなんて。
嬉しくて笑いかけると彼女は可愛らしく笑いながら赤い薔薇を指さした。
「これ、お願いできますか？」
「かしこまりました」
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年6月1日 10時
