Lillyの王様 ×five×《ars/s.s》 (ページ28)

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Episode30 不協和音ページ28

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目が覚めて最初に映ったのは白いシーツの波。

ほとんど乱れることもなく頭の下敷きになってしびれた腕を沈めている。

「……つぅ」

変な体勢で寝てしまったようだ。

下敷きになっていた腕がしびれていて痛い。

反対の腕で支えながらのそりと体を起こすと部屋は朝の明るさを遮ったままの暗さだった。

私、いつのまにか寝ちゃったんだ。

どうしても寝付けなくて何度も寝返りを打ったりした。

そのうちに考え疲れたのか糸が切れたのか、とにかくどこかで眠りに落ちたのだろう。

意外にも朝というのはあんまり寝た気がしなくても同じようにやってくるものである。

「……翔さんは」

翔さんは、どうしてるだろうか。

滑りのいいリネンを払いのけてベッドを抜け出す。

そこで私はテレビの下にあるチェストに置かれた例の写真立てが伏せられたままになっているのを見つけた。

この間と変わらずに揺れている百合の花はその写真を守るように私を見ている。

一瞬だけ足を止めた。

足を止めたのは、一瞬だけだった。

すぐにリビングの方に歩き出してその横を通り過ぎる。

スリッパが立てる小さな音すら気になるほど部屋の中は静まり返っていた。

リビングの方に顔を出すと。

「翔さん…？」

パッと見では見当たらなくて私はソファへと近づいて見る。

死角になっていたソファに身を横たえた翔さんはまだ眠っていた。

「……」

静かに肩が上下していて私はなぜか安堵する。

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