Episode28 -6 ページ19
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駐車場にはバイクが止まっていた。
私たちと一緒に降りてきた理子さんが、申し訳なさそうな顔で私を見る。
「ごめんね、戸羽さん。あの人に言われたら逆らえないの」
「いえ…」
「理子さん、見損ないましたよ。こいつのことは報告しない約束で先日のパーティーだって出てやったんです」
「それは私じゃないわよ。気が付いたら会長がご存じだったの。私は彼女の様子を窺って連れてくるよう言われただけ」
「嘘つかないでください」
「嘘じゃないわ。私が今まで翔くんとした約束を破ったことある？」
「……それは」
先ほどよりは落ち着いた翔さんが言葉を詰まらせる。
理子さんは黒髪をさっと払うと、頭を下げた。
「ごめんなさい。私は会長に逆らえないのよ。一社員みたいなものだから。会長に逆らったらうちの会社もどうなるかわからないし、櫻井家の傘下でいられるように私にできることはこれしかなかったのよ」
言いながら理子さんは私と翔さんを交互に見る。
翔さんは何か険しい顔でどこか一点を見つめていた。
「翔さん…？」
「……あぁ、いや…なんでもない」
私が手を引くと翔さんはあいまいに言いながら首を振る。
「まぁ、いいです。理子さんが父さんになにかと頼りにされてるのは知ってますし、いつもお世話になってますし……今回のことはチャラにしますよ」
「ありがとう、翔くん……お詫びにしばらくお店に毎日行くわ。お金落とすから、勘弁して頂戴」
「お待ちしてます。高いの頼んでくださいね」
ジトっと翔さんに睨まれて理子さんは苦笑いを浮かべた。
「わかってるわ。……戸羽さんも、ほんとうにごめんなさい。怖かったわよね」
「いえ……いいんです……」
私にはそれしか言えなかった。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年6月1日 10時
