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「目黒、花火大会にA誘えよ」
「その日俺予定あるんだよね」
「まじで？一大イベントだぞ」
『聞こえてるよ』
日曜日、
なんか分かんないけど(いつもそう)
目黒と、後ろの方の渡辺と、ファミレスにいる。
『向かいの席に座ってんだ。聞こえるに決まってんだろ』
「Aは？花火大会行く？」
『私は行かないよ、でかい音無理』
「そっか、じゃあ俺1人か」
「翔太友達いっぱいいるじゃん」
「いや、男の集団で行ってどうすんだよ」
『女の子も集まってくるでしょ』
「こねえよ」
『まじで後ろの方の渡辺って、
自分がモテるっていう自覚ゼロだよね』
「ね」
「……前から気になってたけどさ、
俺の事ずっと"後ろの方の渡辺"って呼ぶの？
もう前の方の渡辺じゃね？」
「俺も今思った」
『もうそれで定着してるから変えられない』
「普通に呼んでもらっていい？」
『やだ』
「はあ？笑」
正直に言えば、
自分の気持ちを無視して良かったと思う日々。
目黒が私を諦めて、可愛い彼女を作って。
それが一番いい。
だんだん普通になったポニーテールも、
新しく買ったヘアアイロンも、
一目惚れして買ったスニーカーも、
全部、
目黒の"友達"が似合うようにと努力した結果。
前と比べたら色んな人と会話が出来るようになったし、
明らかな陰口を聞く回数は減ったし、
聞いたとしても気にならなくなったし、
全部全部、
目黒の"友達"が似合うようにと努力して得られたことだ。
「……聞いてる？A」
『…ん？』
「A組の担任結婚したらしいよ」
『あー、写真部の顧問？』
「そう」
『ふーん』
興味のある話題じゃなかったら速攻で終わらすの、私の悪いところだよなあ。
とか思いながら、溶けだしているグラスの氷をつつく。
「…やっぱAさあ、」
『…なに』
「割と言いにくいんだけどさ」
『うん』
「……好きな奴でも、できた？」
「…は、？」
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作者名：MooN | 作成日時：2022年1月31日 20時
