僕が君の傘になろう。３

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(ごめんなさい。
約束したのに、
亮のこと、待ってなくて。
残業してたらお母さんが、
会社に迎えに来て。
今度は私のこと、
一緒に連れて行ってくれるって。
私がいい子になったから、
もう二度と置いて行ったりしないって、
そう言ってくれたの。
だから、私・・・)


Aが、必死で手話して、謝る。


(ええねん。そんなこと。
もう、俺んそばにおるねんから)


抱き寄せて、口付けたら、
その頬に涙がこぼれ落ちた。


母親に手を引かれて、
高橋の車に乗ろうとしてた時。


Aは、幼い女の子に戻ってた。


信じられへんけど、
俺の目には、そうとしか・・・


(そんなこと、あるわけないんだね。
お母さんが、私を好きになってくれるなんて。
そんな奇跡、起こらないんだ。
昔も、これから先も。
一度だって・・・)


(俺じゃ、あかん？
俺がその何倍も何倍も、
Aを好きやんか。
ずっとずっと一緒におる。
この先もずっと。
俺はどこにも行かへん)


ううん、って、Aが、
顔を横に振った。


それから。


(亮、ごめんなさい。
あの人のせいで、血が出てる・・・)


Aが細い指を、
俺の耳に伸ばしかけた。


(ええって。
大した傷ちゃうから)



エンジンかけて、
渋滞の波へと、混ざり合うて。


俺の部屋へと急ぐ。


信号は相変わらず機能してへんし、
街は、暗闇に包まれてて、
まるで、異次元の世界に迷い込んだみたいに感じる。


なんとか、たどり着いた俺の部屋。


予定外に新幹線が止まって、
一旦帰ってる暇なかったから、

朝から掃除するつもりが、
ぐっちゃぐちゃのまんまやけど、


停電のおかげで、
この散らかり具合には、
Aは気付いてへん。


「A、寒い？」


部屋に入るなり、
抱きしめてるから手話が出来へん。


Aが腕の中で、小さく震えてる。


「すぐあっためたるからな」


耳元に囁いて、
唯一、物の置いてない、
ベッドまで。

暗がりの中、
俺が足で物をどかして、
行く道を確保しつつ、
ジリジリ進んでく。

キスに夢中んなってるAの、
小さな吐息が、
俺の胸の芯を痺れさせる。


もう今すぐに。

この子を、俺の全部で愛したい。





シーツの上に辿り着いて。

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