キミ、カオル。I【すとぷり】

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名前も知らないキミに手を引かれ夜の街を走って行く。


夜の繁華街から1本脇道に入って少し行ったところで先を走る彼が足を止めた。


3階建てのビル。


その1階に《jack of all trades(便利屋)》と書かれた看板を掲げるお店があった。


お店のドアには夜ということもあってCLOSEの文字がぶら下がっていた。


「Aには俺達の仲間(かぞく)になって貰う」


また、あの優しい笑顔。


「行こう。みんな待ってる」


彼が扉に手をかけようとした瞬間、勢いよく扉が開いた。


「おかえり、なーくん！」


子犬のような雰囲気を纏った可愛い男の子が飛び出してくる。


「ただいま、莉犬くん」


「お疲れ様って……可愛いー！キミ名前は？」


私に向き直った男の子は次の瞬間ハッとした表情になる。


「…………なーくんのジャケット着てる。…え、まさか……」


急に俯いて何かを思考し始める。


「みんなー！なーくんが彼女連れてきたー！」


「ちょっ!? 莉犬くっ…」


お店の奥から「ええっ」とか「まじ？」と言う声が聞こえる。


「事前に連絡入れるべきだった……」


頭を抱えながらお店に入っていく彼に続いて私もお店に入る。


お店の中はアンティークな雰囲気で統一された家具。


カウンターまであって、少し小洒落たカフェのようだった。


前を歩いていた彼がくるっと振り返る。


「これが俺の仲間(かぞく)だよ」


さっきドアから飛び出してきた男の子を含む5人が彼の横に並んだ。


「は、はじゅっ、初めまして！Aと申します！あの、えっと、よろしくお願いします！」


緊張しまくり噛み噛みの自己紹介をしてしまった事を全力で後悔しつつ頭を下げた。


「ははっ、緊張しすぎ。初めまして、さとみです。よろしく」


「僕はるぅとっていいます。よろしくね」


「どうもー！ころんです！よろしくー」


「俺は莉犬！よろしくね！」


「ジェルでーす。どうぞよろしく」


「そして俺がこのお店の店長兼リーダーのななもりです！なーくんって呼んで…」


「「「「「えっ？」」」」」


なーくんの自己紹介を遮って綺麗にハモった「え？」の一言。

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