キミ、カオル。I【すとぷり】

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side…ころちゃん

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シルシ(・・・)を隠していたAの手を取る。



「やだっ！ 見ないで！……見ない、で」



やっとボクを見てくれたのに。


瞳は涙でいっぱいだった。




笑って。




Aの過去をボクは知らない。


Aが何に苦しんでいるのか分かってもその記憶を取り除いてあげられない。


過去は変わらないから。




なら。





「……ごめん。 許して、A」





なら、ボクが上書きしてあげる。




変わらないなら消してしまえばいい。



キミの記憶を貪り尽くして。



Aのシルシに噛み付く。



吸い尽くしてあげる。



だから。



「……っう」




笑って。




新しく刻まれたシルシ(・・・)に口付ける。



「これで、Aはボクのモノ」



優しく微笑んで震えるAの身体を抱き締める。



「アイツのモノなんかじゃない」



なんで泣くの。


俺はキミに笑って欲しい。



「何回だってボクが上書きしてあげるから」



━━━━━━━笑ってよ。



「……ころんく、ん」


「……ん？」



震えが少しずつ落ち着いてきたAの身体。



「ころんくん」


「ボクはここにいるよ」



ここにいるから。


━━━━━━━キミはどうしたら笑ってくれる？




頭を撫でる。



「……ころちゃんって呼んでもいい？」


「……今？」



Aが少し離れて目線が合う。




「……今」




笑った。


キミが幸せそうに。




あんなに色々したのに。


呼び方ひとつに負けてしまった。



「……いいよ」




ちょっと不服だけれど。


キミが笑っているのならなんでもいい。


ボクはまたAの身体を優しく引き寄せる。




可愛かった。


やっぱりキミには笑顔が似合う。




次はボクの力で笑わせてみせるよ。




━━━━━━━キミはどうしたら笑ってくれる？


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