メリーゴーランド【うらたぬき】

二十八周目 ページ29

「……あれ？もしもし？」









『あっ、も、もしもしっ』









緊張と嬉しさと恥ずかしさとが相まって返事ができなかった私に、渉が不安げに言い直してきて。









しっかりしろ、私…！









「あ、A？ごめん、いきなり電話とかして」









電話越しで聞く渉の声は、少しいつもと違くって。でもやっぱり私の好きな声だった。









『うぅんっ大丈夫…！わ、渉こそ、塾大丈夫なの？』









ちらり、時計を見る。今はまだ塾の時間のはずだ。









「…あー、今休み時間だから。だからちょっとしか話せないんだけど、」









『ぇ、ごめんっ』









よくよく聞くと、周りからはざわざわとした声が聞こえてきていた。









「大丈夫、俺がかけたくてかけたんだから。Aこそ、まだしんどいのにごめんな」









『……ううん、渉が電話してくれて嬉しい』









ぎゅ、スマホを握りしめる。









すると、渉が小さく息を吸った。覚悟を決めた、みたいな。









「…でさ、本題なんだけど」









『……うん、』









電話越しなのに、心臓の音が聞こえちゃいそうなほど、私の鼓動は早かった。

二十九周目→←二十七周目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す