メリーゴーランド【うらたぬき】

二十四周目 ページ25

嫌いなんかじゃない、好きだよ、って。









言いたい。伝えて、もうこのちくちくする痛みを消してしまいたい。









…でも、渉は、……好きな人がいるから。









私と、幼馴染としてやり直したいって言ってくれたから。









今はそれだけで、もう充分だった。









『…渉、ありがとう。看病してくれて』









私の今の、精一杯の感謝の気持ち。
そして、精一杯の、…強がり。









『私、…また、幼馴染できるように、頑張るね』









へらり、笑ってみせる。熱のせいで弱々しいけど、渉には伝わったかな。









「……………………Aっ、」









私を見て、渉がなんだか辛そうな声を出した。









『……………わたる？』









私が名前を呼ぶのと、渉が私に向かって近づいてくるのは、ほぼ同時で。









……ちゅ、









確かに、熱を感じた。









一瞬感じたそれは、すぐに離れて。









ゆっくりと、渉の顔が遠くなっていく。









声、すら出なかった。









自分の唇が、自分のじゃないみたいで。









まだ残っている渉の熱が、今起こったことを物語っていた。

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