第108話 ページ11
・
帰り道は怖いくらいに静か。
爆豪は普段自分から話しかけるような性質ではないので、私が話しかけないこの沈黙は続く。しかし不思議と気まずさはない。
爆豪がちょいちょい後ろを振り向くから、道案内をすれば素直にまた歩き出す。本当に私を家まで送ってくれるらしい。
好きな人と帰れるって今までの徳全部使い果たした気分だ。あと滅多に見ない私服姿も見れちゃったし。オレンジTシャツの上に薄手の黒シャツの袖を捲り羽織っていて、下は黒パンツ。シンプルだがスタイルがいいせいで普通にカッコよく見える。ていうか普通にカッコいいんだけども。
もうちょいお洒落な恰好しとけばよかったかな。…Tシャツジーパンが私にとってのお洒落着だから無理だわ。
アイボリーの髪が夕焼けに反射してキラキラ光る。それが綺麗だな、なんて。
「おい」
「んー？」
「テメェジーパン憧れてヒーロー目指しとんのか」
「え、急に何？」
「いーから答えろ」
こちらを見ない爆豪の真意が分からない…が、答えないと怒鳴られてしまう。
「そりゃまぁ…ジーニストみたいなヒーローになりたいよ？爆豪は？」
「オールマイトをも超えるヒーローになるためだ」
「そんな気がした」
「じゃあ聞くなや」
「え、聞いて欲しいってフリじゃなかったの？」
「違ェわ！！」
何だ、フリじゃないんだ。結局怒鳴られたよ。
「何であいつだ。大体ああいうタイプのヒーローのファンはキャーキャーウルセェモブ女が多いだろ」
「その女子とは違う風に見える？」
「チッ」
「何で舌打ちした？？？」
そんなに気に食わなかったの？？？…だけど爆豪にしては棘のない言葉にまた浮足立つ。顔には絶対出さないけどね。
改めて爆豪の質問について考えてみる。…ジーニストに憧れてる理由、ね。
「…なんでか分からないけど、
「声だァ？」
「声を聞いただけで安心できるって、最強じゃない？」
爆豪が眉を顰めながら私を見やる。爆豪にとっては“たかが声”なんだろうけど、“されど声”だと私は思う。
その人の声が聞こえた瞬間、自分は大丈夫だと思える存在。それがどれだけ心の支えになることか。
「爆豪が“勝つこと”に拘るのと一緒。私は誰かの心の支えだとか、拠り所になりたい。私がジーニストの声を聞いて安心するのと一緒でね。だからヒーロー目指してる」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 599人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みぃ - 更新再開！嬉しすぎます！！最推しの活躍に死にかけてます。続きが楽しみです！ (12月16日 9時) (
レス) id: 8d2c2035a1 (このIDを非表示/違反報告)
Ayaka(プロフ) - 更新再開ありがとうございます！もう一つのヒロアカ作品の更新再開も待ってます。無理をせずに更新していただけるとありがたいです！続きも楽しみに待ってます^_^ (11月30日 19時) (レス) id: de4c1d5b4a (このIDを非表示/違反報告)
Ree(プロフ) - 更新再開嬉しいです！ありがとうございます！ (11月24日 13時) (レス) @page31 id: dbef1d39c6 (このIDを非表示/違反報告)
トーン - 更新気長に待ってます。一気読みしてしまいました。すごく面白かったです！この設定大好き(*≧∀≦*) (5月5日 2時) (レス) @page28 id: c13dab87c8 (このIDを非表示/違反報告)
あすか(プロフ) - とっても面白くて大好きです！更新待ってます！ (2023年2月10日 5時) (レス) @page24 id: 6b7ef0d566 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ば
| 作成日時：2022年11月13日 18時
