魅惑的ミルフィーユ

※ ページ31

お腹減るんだ、この状況で。
私は胸がいっぱいでこの甘ったるいイチゴの味だけでむせ返りそうな程なのに。




「食わしてよ？」


「え？そんなに食べたかったですか？じゃあ、ここから出られたら二階堂さんに、」




あ、れ？



一旦離れたはずなのにいつの間にそんなに近くに？
って思ったのも束の間
部長の舌が私の口の中の飴をコロコロと転がしていた。




「んぁっ、ぶ、ちょ、･･･、」


「んー、･･･あまい、」




食わしてよ、とはそういう意味だったのか
大人とはこういうことなのか
酔いしれた頭でそんな事を考えた。




部長ったら、なんてこと。
私、部長の彼女みたい。
こんなにキスしてくれるなんて。
なんてことよ。





で、私、こんな深いキス、したことないんですよ。
いきなりハードル高すぎやしませんか？




「はぁ、･･･ぶちょ、私、もう、」


「･･･っ、やりすぎたな。」


「･･･です、」



もう大丈夫、とか強がってられないほど
部長は私をメロンメロンのドロンドロンにしてしまった。





部長は私から少し距離を置いてからため息をついた。




「園田？俺、おっちゃんだぞ？」


「私、ぶちょーをおっちゃんとか思ったことないです。」


「おまえと一回り以上離れてる。」


「大人で素敵です。」


「･･････ほんとに、俺でいい？」





弱気な部長の声を初めて聞いた。



思わず部長を見ると、やっぱり自信のなさそうな顔をしてる。
なんでそんな顔するんですか。




「私、ぶちょーがいいですっ、北山部長がっ！大好きですから！」




真っ直ぐ部長の目を見て言った。
そしたら部長はまた、大人の顔して微笑むんだ。




「ま、俺が恋愛のなんたるかを全部教えてやるよ。」


「はい！よろしくお願い致します！」


「まずは･･･」


「まずは？」







「簡単に男に耳たぶ触らせんなってとこからかな。」






めっっっっちゃ根に持ってるじゃんそこ。




大人の定義ってよくわかんない。





でも私は、めでたくそんな部長の彼女になれた。






「色々、教えてください。」





子供の私はここから大人の階段を上ってく。
それはそれは最高級素材の階段を上り続けるんだ。



でも何故か部長は私の言葉に動揺してるみたいに頭をかいた。





「子供のくせにっ、」





･･････とりあえず"赤ちゃん"から子供に一歩進めてるみたいだ。
よしよし。





そこで、明かりが付いて
エレベーターのドアが開いた。

END

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