君のその手に ーspinoff ー 桐谷麗華の恋。

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「･･･がうんすよ」


「えっ？」



俯いてる北山くんの声が聞き取りにくくて顔を近付けると「違うんすよ！！」って声を上げるからビクってなる。




「俺、見た事あるんです。小沢専務と桐谷課長が一緒にいる所。すげー雰囲気良くて仲良い夫婦なんだろなって、微笑ましく思ってたから。色々言う奴はいましたけど、このお二人は本物なんだなってちょっとした憧れっていうか。」


「そ、そう。ありがと。」





恥ずかし。
いつの時だろ？出来るだけ社内では話さないようにしてたのに。本物、とか面と向かって言われると照れくさいじゃない。




「だから！！見た目とか体裁だけでそういう事はやし立てるような輩、ムカつくんっす！！」




酔ってたらよく喋る。
子供をあやす様にはいはい、と背中をぽんぽんしてあげた。



可愛い後輩が出来た。
私達夫婦をこんな風に言ってくれて
なんだかよく知らないけど慕ってくれてるみたいだし。



この子の事はしっかり面倒見て
どこに出しても恥ずかしくないように育ててあげたいって強く思った。



変に母性本能が働く自分に驚くけど。
いいよね。こんな子が社内に一人いたって。



そこで北山くんの携帯の着信音。




「出ていいよ？」




そう伝えても出る様子はない。



「こんな深夜に掛けてくるってよっぽどじゃないの？」





彼女なんだろう、
そう思ったけどそこは黙っておいてあげた。のに





「束縛がすげーんす。彼女、三つ下なんですけどもう何考えてるかわかんなくて。」




上司にあっさり彼女からの電話だと言ってしまうのも若さ故なんだろうか。





「何考えてるかわかんないなんて。そんなのきっと彼女は北山くんの事しか考えてないわよ。」



そう言ってあげると目を見開いて、さすが！とか言ってくるから笑っちゃう。





「そう！俺の事しか考えてないんですよ！マジでね、それが辛くて。もっと他にも目向けろよって思ってしまって。」


「そんなの若いし無理よ。今が一番恋愛にのめり込む時期じゃない？そういうのも受け止めてあげるのが彼氏じゃないの？」


「出来るだけ受け止めてるつもりなんすけどね。足りないんでしょうね。いつも不満タラタラっすよ。」


「へぇー。」



こんな可愛い彼氏に不満とか言える彼女、贅沢者。



「だから俺は結婚しても仕事バリバリしてる桐谷課長とかマジ憧れっす！！」





熱い目で熱く語られるもんだから
またおかしくなってふふって笑ってしまった。

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