君のその手に ーspinoff ー 桐谷麗華の恋。

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「⋯こんなにっ、こんなに好きになったら辛いっ⋯」





私の全ては、これだった。
辛い恋がしたかったんじゃない。


私はただ、日常に少しのときめきが欲しかっただけなのに。



勝手な事を言う私を宏光は冷静に見据える。




「⋯じゃあ、旦那と別れてオレと一緒になってよ？」




初めて言われたその言葉はきっといつも宏光が思ってても言えなかった言葉だったんだろう、とすぐ分かるくらい、自然に聞こえた。



でも、そこで、うん、と言える訳がないんだよ。




「そんな事聞きたい訳じゃないよっ」




逆ギレもいい所だ。
私達は、もう、今までみたいには会えない
こんなにさらけ出して今までみたいに軽く付き合うなんて出来ないんだから･･･



終わりなんだって、




「⋯じゃあ、どうすんだよ？オレはずっと苦しかったよっ、今更なんだってんだよ、Aさんだけが辛い思いしてるとか思ってんの？そんなのおかしいだろ？」






そうだよ、おかしいよ。
宏光は苦しんでたんだ。
そして宏光の苦しみを肌で感じながら私は優越感に浸ってたのかもしれない。




でも、私は、そんな風に苦しむなんて嫌。






「⋯今更なんなんだよ？」





ほんとにお手上げ、というように宏光は項垂れてる。








わけわかんないよね。
今まで冷静に宏光との関係を続けてたのに
いきなり大人気ない私なんて、きっと宏光には理解出来ないだろう。



最後だから、本当の事をさらけ出して、終わりにするんだ。









「こんなに好きになる予定じゃなかった⋯」



「⋯ふざけんなっ！」







本気で怒られた。
それでいいの。
こんな勝手な事言う私に愛想付かせて？お願い。




「⋯こんなに好きになったらもう一緒にいられない。」




バイバイ、宏光。




「・・・ふざけんなっ⋯」




私の言葉に宏光も諦めたのかもう一度小さく叫んだ宏光は
頭を抱えてその場に座り込んだ。



そんな宏光を見てたら
涙が溢れて止まらなくて私も立ってられなくなってその場に蹲った。






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