帰ってきた「君のその手に」

４６ 藤ヶ谷side ページ46

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「で？仕事ほんとに、辞める事にしたんだ。」




うん、てなにハニかんでんだか。
結局、最終的には惚気聞かなきゃいけねーんだな。




「伊藤さんは、仕事辞める事に抵抗ないですか？」って隣りの日奈子は納得がいかないようだ。


「ある。あったよ。なんなら一生続けたいって思ってた。でも、･･･宏光の言う事、わかるから。」




結局、相手に合わせちゃうのな。
それが北山に合わせてんだ、と思うと面白くないのはやっぱり俺がAの元彼だからなのかな。





「･･･太ちゃん？」




あ、やべ。
絶対今嫉妬してる顔晒してる。
日奈子にバレたら後でややこしいから自分の頬をパチっと叩いてみた。もう遅いかもだけど。




「突然だけど崎本部長も理解してくれて来月には、退職する事にした。」


「･･･そっか、」





なんだよ。あんなに仕事好きだったのに
あっさり北山に言いくるめられて辞めちゃうのか。



・・・寂しいじゃん。




でも、過呼吸はマジで心配だったし
俺が同じ立場だとしても北山と同じ判断をしただろうな。





「送別会、やるか。」


「そうだね。でも伊藤さん、ずっとこれからも私達と付き合ってくださいよ？」


「うぅ、ありがとうーっ。嬉しいよっ、」





そこだけは目を潤ませたものの
辞める事に対してはもう吹っ切れてるようだ。




相手に流されてるようで
ちゃんと、自分でも納得して消化して
今をしっかり見据えて生きてるAがやっぱり好きだ。




・・・、友達として。






「よっ、おっつかれ〜、」





キタキタ。
最近北山の顔見る度にイラつくのはいったいなんなんだろう？結局、俺は北山には何やっても敵わないのかも。





「じゃあねー、また送別会で。」と北山。
おまえも来るのね。別に呼んでねーのに。




俺達に背を向けて二人で歩き出すその姿を眺める。



早速腕なんか組んじゃうわけか。
別にいいけど。






その時、ふわり、と俺の腕が温かくなる。





「私達も、帰ろう？」





ニコッと微笑む日奈子がなんだか無性に愛しくなった。







「･･･結婚、すっか、俺達も。」






何も考えず、ただ思った事を口に出してた。
途端驚いたような表情を見せた日奈子はニヤリと笑う。



「いいけど？でも私は会社辞めないよ？」


「いいですよ？でもなんかあった時は二人で考えよう？」






運命共同体
どんな困難が待ち受けても
日奈子が幸せになれるように俺は一生、模索し続けるよ。




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