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８ 北山side← ページ8

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ひたすら食いっぷりのいい成瀬を眺めながら俺も釣られて食が進む。成瀬のジョッキが減る度に俺も追加で注文してたら結構飲んじゃってる。



にしても食って飲んでる俺たちに、会話はほとんどない。




ただ、こいつの食べっぷりに相反して、綺麗な箸使いとか、食べ方の所作がお嬢様っぽいのは新発見だ。




だいぶ酒が回ってきてたけど冷静に考える。




このガヤガヤとした雰囲気じゃ何も言えねーから。





｢よし。次、行くぞ？｣



何気なく言ってみると成瀬もはい！ってノリよく返事してくれたからほっとする。






｢ごちそうさまでした。｣


｢おぅ。｣




返事しながら次は間違えないように店選ばないと、って歩きながら頭をフル回転。




雰囲気のいいバーのドアを開けると
途端見上げられた。つってもヒール履いてる成瀬とほとんど身長変わんねーけど。







｢なに？｣



｢ここ、ですか？｣



｢苦手？｣



｢いやっ、大丈夫、です。｣





こんだけ一緒に食って飲んでもちっとも態度変わんねー成瀬。



ここっからっしょ。



とりあえず店の中に促して俺も後を付いて入った。





二人でバーカウンターに横並びで座る。
さっきのザワついた雰囲気とは一点、静まり返った薄暗い店内に耳障りのいい音楽。





｢なんでも頼んで？｣



そう言ってドリンクメニューを広げると、
急に沈んだ顔になった。





｢･･･どした？｣



｢あの、･･･北山さんと同じもので。｣





今日の成瀬はいつもよりわずかだけど喜怒哀楽を俺に見せてくる。



それは彼氏と別れたせいなのかもしれない。



それならその話し、まるっと聞いてやろうじゃねーか。





コトリとテーブルに置かれた
小さな泡が立つピンク色のカクテル。





｢スプモーニ･･･、｣



｢見ただけでわかんの？｣



｢よく･･･飲んでる、ので。北山さんがこれを飲むなんて想像もつきませんね。｣



｢飲みすぎた後はこういうさっぱりしたの行きたくならね？｣




しばらくの沈黙の後、そうですね、と静かに言ってそれを口にした。





途端、





｢えっ･･･、｣




頬に一筋の涙が零れている成瀬に目を見開いた。




｢成瀬･･･？｣



｢すみませんっ、なんでもないですっ。｣






自分の涙に今、気がついたように涙を拭ってる成瀬に今しかないなって自分の背中を押した。

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