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ホイッスルが鳴った。しかし、それは試合開始の合図ではない。

フィールドを走り出したのはたった2人、風丸と戦国伊賀島中の霧隠才次という少年。豪炎寺に勝負を挑んだものの相手にされず、代わりに風丸が勝負の相手を名乗り出たのだ。

『……らしくないな。』

「何が?」

『風丸さ。風丸自身が先程言っていたろう、相手にするべきではない、と。いつもの風丸ならそうしていたんだろうが、今回そうしないのは……』

大神は円堂の問いに答えながら観客席を見渡した。宮坂を探したのだが、見つからずに諦めて2人の勝負に目を移す。

『後輩が観ている、という事が大きいのだと思う。』

「宮坂だっけ。」

『そう。』

勝負内容はセンターサークルからゴール前のカラーコーンを往復。ボールをキープしながらドリブルで元の位置まで戻ってくるという、簡単なミニゲームだ。

直線を走るスピードは大差なし。

競り合いのような形でカラーコーンを回ると、霧隠が自身のボールを捨て置き、風丸のボールを奪った。ほぼ不意打ちのような形でボールを失い、風丸は咄嗟の判断で霧隠が捨てたボールをキープする。

折り返し地点を暫く過ぎて、あと数mでゴール地点になった所───2人のボールが足元から奪われた。

「勝手な行動は慎め、霧隠。」

霧隠と同様のユニフォームを身につけた少年が、奪ったボールを踏みつけながら霧隠を冷たく見つめた。

「サッカーは個人競技にあらず……チーム同士で競うものだ。」

同チーム選手から叱られた霧隠は残念そうに顔を背けると、ちぇっ、と吐き捨てる。背を向けて歩き出し、思い出したように振り返った。

「名前覚えとくぜ、えっと……藤丸くん。」

「風丸だ!」

ミニゲームは中断され、突然現れた戦国伊賀島中の選手を雷門イレブンは呆然と見つめる。戦国伊賀島中の1人が円堂の前に立つと、頭を下げた。

「霧隠の無礼を謝罪する。」

「え?あ、あぁ……」

「では、御免!」

困惑する円堂を置いて、戦国伊賀島中の選手たちが姿を消した。

『全国大会出場校なだけはある……それに、霧隠くん。彼は雑なところが目立つが、テクニックもスピードもある。』

「……ああ、アイツは速いよ。」

霧隠の実力を身に染みて感じたようで、風丸は足元を見つめながらそう言った。しゃがみこんで、靴紐を結び直す。

先程よりも強く、決して緩まないように。

「だけど、俺は簡単には負けてやらない。“炎の風見鶏”、頼むぞ。」

『それはこちらのセリフですって。』

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鷹羽(プロフ) - コメントありがとうございます~!!!好きと仰っていただけて感激です^^ノロノロペースではありますが、更新させていただきます! (2021年7月15日 18時) (レス) id: 338e0ddf16 (このIDを非表示/違反報告)
名前はまだない - コメント失礼しますm(_ _)m 主人公の設定とかめちゃくちゃ好きです!!鷹羽さんのペースで頑張ってください!更新待ってます! (2021年7月14日 19時) (レス) id: 567784a46c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鷹羽 | 作成日時:2021年3月30日 1時

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