検索窓
今日:2 hit、昨日:21 hit、合計:13,888 hit

101 ページ4

「大神。」

次の日、部活時間に風丸は大神に声を掛ける。風丸の目は揺らぎなく、真っ直ぐに大神を射抜いた。

「練習を頼む。」

『いいよ。』

昨日は失敗の連続により中断された“炎の風見鶏”。全員が固唾を呑んで見守る中、その技は思いの外簡単に成功した。

それに、以前よりも威力が増している。

「……よし!」

成長を喜んでいる。心が弾んでいる。ボールを追いかけることが、仲間と共に在ることが、まるで陸上を始めた頃の様に楽しいのだ。

風丸一郎太は何故サッカーをするのか。

それは……それはきっと───。

『風丸、良いタイミングだったね。』

「ああ、お前もな。」

何度も、何度も練習を繰り返した。強くなれるように。

休憩に入れば、大神と風丸が2人肩を並べてベンチに座る。ぐっとドリンクを飲み干し、風丸はタオルで顔を覆った。

「……俺、宮坂に言ったんだ。試合を観に来てほしいって。言葉だけじゃきっと分かってもらえないだろうから。」

『へぇ。』

大神の空返事に風丸は思わず笑った。構わず続ける。まるで独り言のようだが、大神は確かに耳を傾けてくれている……何も言わずとも、長年の付き合いで何となく分かった。

顔を上げる。吹き抜ける風が心地良い。

「俺はここに残るよ、お前たちと一緒に全国へ行く。」

『それじゃあ、もう心配はない訳だ。』

「ああ……俺たちの“炎の風見鶏”、次の試合で決めてやろうぜ!」

風丸はベンチから立ち上がり、大神を振り返った。

大神からは風丸の姿が逆光になっていて、表情を確認する為には目を凝らさなくてはよく見えない。

しかし、その目に宿る光だけが異様に強く輝いて見えた。

『……楽しそうだね。』

「ああ、楽しいよ!お前たちとサッカーするのは!」

今度は見えた。ただ純粋に、サッカーを楽しんでいる幼馴染の笑顔が。

───ああ、宮坂くん……だったかな。

どうか今の彼を見てやってほしい。

君の目には、今の彼がどう映ってくれるだろうか。

次の試合がとても楽しみだ。

102→←100



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (57 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
78人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

鷹羽(プロフ) - コメントありがとうございます~!!!好きと仰っていただけて感激です^^ノロノロペースではありますが、更新させていただきます! (2021年7月15日 18時) (レス) id: 338e0ddf16 (このIDを非表示/違反報告)
名前はまだない - コメント失礼しますm(_ _)m 主人公の設定とかめちゃくちゃ好きです!!鷹羽さんのペースで頑張ってください!更新待ってます! (2021年7月14日 19時) (レス) id: 567784a46c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鷹羽 | 作成日時:2021年3月30日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。