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『総帥の補佐?』

帝国一の実力だとか、首席だとか、一先ずは置いておいて、大神が1番に引っかかったのはそこだった。

『総帥って──あの影山零治のかい、この僕が?』

影山零治は人の命を、子供たちの命を、簡単に弄ぶような人物だと認識している。あの人間の補佐をしていたならば、どんな人物かを知りえている筈である。

影山が上手く伏せていたのだろうか、それとも、自分が酷く無知だったのだろうか。

──協力をしていたというのか、この僕が望んで。

『……ッ、』

──視界が再び揺れた、おまけに頭痛もする。

突然訪れるそれは、失った記憶を思い出そうとする度に、思い出したいと願う度に、いつも拒絶反応のように付き纏う。

思い出す事を、無意識に恐れているように──。

「大丈夫ですか、」

頭を抑え、顔を顰める大神に鬼道が声を掛ける。さらに言葉を続けようとするが、少し考え込んで呑み込んでいた。

──ああ、君はやめよう(・・・・)という言葉を呑み込んでくれたのか。

『……ありがとう、問題はないさ。少しばかりふらついたんだ。今日は試合だったのだから、多分そのせいかな。』

「……無理はしないでください。」

『ああ。』

気づけば総帥室の扉が目の前にあった。息を呑んでその1歩を踏み出せば、招くように扉が開いた。

1度は来たここを、大神はもう一度ぐるりと見渡す。視界の先に影山が座っていたであろう椅子が、ひたすらに主が帰るのを待っていた。

「少し待っていてください。」

鬼道はそう言うと、机の上にある機材を操作する。慣れている手つきではないものの、操作程度ならば簡単なようで、待てを受けてから数分足らずで声が掛かった。

「こちらです。」

鬼道に促され、大神は画面を覗き込む。

そこには、顔写真、名前、年齢、出身の小学校……等、多くの情報が事細かく示されていた。

『……うん。名前、誕生日、出身校まで、何もかもが出鱈目だ。』

大神Aという人間は帝国学園に居ない。

そこに書かれているのは、嘘、嘘、嘘──嘘で塗り固められたその情報は、大神を全くの別人に作り替えていた。多くの手間が掛けられ、大神Aという人間を隠しているように見える。

決して、()にも見つからないように。

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鷹羽(プロフ) - コメントありがとうございます~!!!好きと仰っていただけて感激です^^ノロノロペースではありますが、更新させていただきます! (2021年7月15日 18時) (レス) id: 338e0ddf16 (このIDを非表示/違反報告)
名前はまだない - コメント失礼しますm(_ _)m 主人公の設定とかめちゃくちゃ好きです!!鷹羽さんのペースで頑張ってください!更新待ってます! (2021年7月14日 19時) (レス) id: 567784a46c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鷹羽 | 作成日時:2021年3月30日 1時

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