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大神は土門に連れられ、帝国学園に訪れていた。
戦国伊賀島中との試合後、誰もいなくなったグラウンドで少し話をしていた大神と土門。2人が話をする中で、土門は大神の記憶のために帝国学園に行こうと言い出したのだ。
「……こっちです。」
雷門中に帰ってすぐに帝国学園へ向かい、今現在に至る。
学園に入るや否や、土門は何かを警戒するように辺りを見渡し、確認を済ませると大神を呼ぶ──というのを繰り返していた。
『土門くん、一応聞きたいんだけれど……僕がここに来てはいけないという決まりでもあったりするのかい。』
やけに慎重に進んでいる背中を、大神は不思議そうに見つめる。
「いえ、ないですけど……」
土門は歯切れの悪い返事をした。
それ以上の会話は続かず、土門も何も話そうとはしなかった。あたりを警戒するこのに集中しているようで、あまり口が回らないらしい。大神はそのまま黙ってその背中を追うことにした。
通路は複雑に交差してはいるが、土門は慣れたようにその道を進む。
向かう道のりからして、総帥室に向かっているのだろうか──大神は頭に思い浮かべた通路を辿って、土門が向かっている目的地を思案する。
「じゃーん、ここです。」
土門について行くこと約20分、土門が止まった場所はひとつの小さな扉の前だった。
予想外の目的と、この場所が思い浮かべた学園内の地図にない場所であることに、大神は首を捻る。
『……ここは?』
「ここは大神さんの部屋ですよ。前、ここで暮らしてたのは覚えてません?」
『は……僕が、ここで暮らして……?』
大神は戸惑いながら、その手で扉に触れた。無機質で冷たいアルミの板が、触れている部分から大神の熱を奪う。
『……覚えていないなぁ。』
大神が目を伏せると、扉のすぐ横に取り付けられた暗証番号式のドアロックが目に入った。
「確かここは……指紋認証が通ったら番号が光るんで、この扉の番号を入力するんですけど……思い出せます?」
『分からないけれど、頑張ってみないことには……』
訝しげな顔をして、大神が指紋認証のパネルに人差し指を当てれば、数字が青く浮かび上がった。
「あ、ちなみになんですけど俺がやると……」
そう言って、土門は指紋認証のパネルに指を置いた。すると、青く浮かび上がっていた数字は光を失い、その代わりに赤字で大きく『NO』と表示される。
「こうなります。」
『……Oh no……』
土門が隣で小さく笑った気がした。
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鷹羽(プロフ) - コメントありがとうございます~!!!好きと仰っていただけて感激です^^ノロノロペースではありますが、更新させていただきます! (2021年7月15日 18時) (レス) id: 338e0ddf16 (このIDを非表示/違反報告)
名前はまだない - コメント失礼しますm(_ _)m 主人公の設定とかめちゃくちゃ好きです!!鷹羽さんのペースで頑張ってください!更新待ってます! (2021年7月14日 19時) (レス) id: 567784a46c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鷹羽 | 作成日時:2021年3月30日 1時