ロスト・パピヨン (ページ21)

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『アグリーは、人間のことが憎くてたまらない生き物なんだ。ずっと昔、人間と彼らは同じ地上に住んでいたけど

次第に＂醜い＂って蹴飛ばされたり、笑われたりするようになって、ひっそりと違う場所で暮らし始めたんだ。

それが、君が夜に迷い込んだ森。』

なんとなく、なんとなくだけど

そんな話を聞いたことがある気がしてきた。

…そうだ、昔お母さんが手にしてたあの分厚い本。

読んでもらったことがあった

『普段アグリーは人間の世界に行くことはできないんだけど…偶然境界線から飛び出てしまったんだね。

君が転がり落ちた場所、そのアグリーが飛び出したせいで穴が空いていたみたいで。』

｢…じゃあ、わたしが今いる場所は

ここは、なんの世界なの？｣

『"アグリータウン"、そう呼ばれてる。
アグリー達が暮らす世界だよ。

昔ね、人間とアグリーが戦争したんだ。その時にとんでもない力の持ち主が、もう二度と接触できないようにアグリーをこの世界に閉じ込めたんだけど

一緒に何人かの人間も引きずり込まれてしまって。』

｢じゃあ、それが…｣

『そう、僕らの先祖。

もちろんアグリーと同じ場所に人間が居たら、すぐに攻撃しようと追いかけられてしまうから

こうして彼らに見つからないように、先祖のみんなが人間の里を作ってくれた。僕ら家族はここで生まれて、ここでずっと暮らしてる。』

｢…、｣

そんな、おとぎ話みたいなこと

ほんとにあるの？

いや、私のいた世界では
実際おとぎ話になってしまっていた。

夢じゃないのなら、きっとこれは本当で
ここは、その＂アグリータウン＂なんだろう。

まだよく分かっていないけれど、

『無理もない、なかなかすぐ信じることなんてできないさ。

疲れただろう？とりあえずしばらく休んでいきなさい。』

本当はすぐにでも帰りたい、けど

疲れているのも事実で。

どうせなら、お言葉に甘えるのもありかな…なんて
優しいその話し方に、つい首を縦に振った。

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