177話 「可能な範囲でならば」 ページ33
瞬きをすれば過去の情景が瞼の裏によぎった。
力があれば、今を生きれる。だけど、その先を生きるには何が必要か。可能ならば大学にも行こうと思っていた。幸い、俺の境遇ならば奨学金を貰える。成績さえ他よりも良ければ………遠くない未来、働いて生活して行くためには今の俺が頑張るしかないのだ。
だから今は誰にも褒められなくとも、未来の俺が褒めてくれるものだと思って勉強していた。スーツを着て踵を盛大に鳴らしながら駆け回る。ネクタイにジャケット……自分の似合わないだろうスーツ姿がちょっとした目標だった。それ以上は望んでいなかった。
独りで生きていけるだけの頭が必要だった。
『まあ、益々浮いたけどな』
「どうしてですか？」
『喧嘩負けなしのヤンキーみたいなやつが成績上位だぞ？』
「………羨ましいです」
『なんで？』
「僕は……成績こそいいけどそれだけなんです。あいつと違って」
少し前の三郎君の言葉を思い出す。「勉強だけの」と自分の事を称した。
あいつというのは考えなくても二郎の事だろうと察しはつくし。
『いいんじゃねえの？支え合ってこその兄弟だろうし。二郎が脳筋な分、三郎君が喧嘩の面では支えてもらいな。かわりに三郎君は誰にも負けないくらい脳みそ鍛えればいい』
「でも……」
『二兎を追う者は一兎も得ず、な？勿論、意味はわかるだろ？』
「はい」
『ははっ、流石だな』
コクリと頷いた三郎君の頭をわしゃわしゃと撫でた。
少し嬉しそうな彼がなんとも可愛らしい。なんだかんだ言いながらも勉強は好きなようだし、褒められるのも好きなようだ。二郎には突っかかるわ、一郎にはいい顔しようとしているが中学生。これが当然に決まっている。誰かさんとは違って。
『俺、一回だけ全力で学年一位を取ろうとしたんだけど……睡眠時間削ったら喧嘩でガタがきてさ……結局右腕やっちゃって断念したんだ。同時にやるもんじゃねえわやっぱ』
ケラケラと笑いながら言えば神妙な顔をして参考書を見つめる三郎君。
きっと悩んでいる。自分にできること、できないこと……やれること、頼れること。
それを選別して支え合いながら生きていくことができる環境にいるのだ。
「………Aさん、僕に話してくれてありがとうございました」
『おう！また聞きたいことあったらいつでもいいぜ』
「……勉強も？」
『………教えれる範囲なら』
眉間に皺を寄せて言えば三郎君が可笑しそうに笑った。
吹っ切れたように笑っていた。
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マカロニ - 夢野さんとの絡みが凄く楽しみです。どのように知り合うのか…。これからも楽しみにしています。 (2019年5月6日 20時) (
レス) id: 9866c7f19c (このIDを非表示/違反報告)
蛇58(プロフ) - 推しってONE PIECEでの推しとかだと思った〜マジびっくり (2019年4月8日 23時) (レス) id: 0dda0db49d (このIDを非表示/違反報告)
霊夢どうふ - バイオお好きなんですね……私も大好きです。母がガチ勢です。一章の泣けるぜとあうんから察してましたけどばいおおおお((作者さんと語りたいですアシュリーのぱんつとレオンの尊さとエイダ様の美しさについて。面白いです！！更新頑張ってください！ (2019年3月24日 0時) (レス) id: bd41a59bf6 (このIDを非表示/違反報告)
椿 - こ、これからもお体に気をつけて頑張ってください！( *｀ω´) (2019年3月23日 22時) (レス) id: 15c63c8bdd (このIDを非表示/違反報告)
椿 - も、もう…しゅき、しゅきすぎる………！(語彙力の低下) (2019年3月23日 22時) (レス) id: 15c63c8bdd (このIDを非表示/違反報告)
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