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156話 「医者からのことば」 ページ12

「ただいま戻り……ああ、そうか」

もう帰ったんだったな。
当然だが真っ暗なリビングの照明を着け、水でも飲もうと冷蔵庫を開けた。

「ん?」

見覚えのないタッパーが増えている。
いくつか取り出せば和え物や肉じゃがなどのおかずが入っていた。
タッパーの一つに輪ゴムでメモが止められている。

――お疲れ様です、ちゃんとご飯は食べてくださいね。 A――

右下に描かれているメガネをかけた兎の絵を見て小さく笑った。
飯食い終わったらゲームでもするか。









久しぶりにキヨばあと海に潜った。
今日は貝類が大量に獲れ、中々にあたりだ。サザエやアワビを小さめのクーラーボックスにおすそ分けされ、意気揚々とシンジュクに向かっている。勿論向かう先は寂雷先生の病院だ。
予め電話は入れていたので予定通りの時間につけば診察室に通された。ナースさんにクーラーボックスを不思議そうな顔で見られたが気にしない。

「久しぶりですね、A君」
『はは、先日はどうも』
「独歩君も謝っていましたし、許してくださいね」

優しく微笑まれてしまってはぐうの音も出ない。寂雷先生の笑顔には太刀打ちできないからだ。仏様も逃げ出すレベルだと思うよ。クーラーボックスごと差し入れですと渡すと驚きつつも喜んでくれた。独歩君たちと一緒に食べますね、との言葉からして麻天狼の仲良しレベルは相当なものだろう。
椅子に座って生理痛と処方される薬の説明をされたあと、本題に入った。

「さて、例の件ですが……写真があると言ってましたよね」
『はい。銃兎さんが撮りやがったものなんですが……これです』
「ふむ……」

今朝、理鶯から転送してもらっていた画像を寂雷先生に見せれば興味深そうにガン見している。ひとしきり眺めた後、俺に視線を戻して「私にも転送しておいてもらっていいですか?」と言われる。忘れないうちにとその場で送ってから先生に向き直った。

「自分の意思ではそうはならないんですよね?」
『ですね……今はできないですし』
「そして戻るときに激痛ですか……」
『めちゃめちゃ痛いんですよね』
「もしかしたら一度だけかもしれませんし、今後も起こるかもしれません。なるべく兆候……のようなものがあるかはわかりませんが、そうなった場合は人目につかないように」
『………はい、分かっています』
「大丈夫、貴方は紛れもなく人間ですよ」

にっこりと微笑みながら言ってくれた寂雷先生の言葉に、少しだけ救われた。

157話 「猶予:3コール」→←155話 「悪い夢を見ているだけかもしれない」



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マカロニ - 夢野さんとの絡みが凄く楽しみです。どのように知り合うのか…。これからも楽しみにしています。 (2019年5月6日 20時) (レス) id: 9866c7f19c (このIDを非表示/違反報告)
蛇58(プロフ) - 推しってONE PIECEでの推しとかだと思った〜マジびっくり (2019年4月8日 23時) (レス) id: 0dda0db49d (このIDを非表示/違反報告)
霊夢どうふ - バイオお好きなんですね……私も大好きです。母がガチ勢です。一章の泣けるぜとあうんから察してましたけどばいおおおお((作者さんと語りたいですアシュリーのぱんつとレオンの尊さとエイダ様の美しさについて。面白いです!!更新頑張ってください! (2019年3月24日 0時) (レス) id: bd41a59bf6 (このIDを非表示/違反報告)
椿 - こ、これからもお体に気をつけて頑張ってください!( *`ω´) (2019年3月23日 22時) (レス) id: 15c63c8bdd (このIDを非表示/違反報告)
椿 - も、もう…しゅき、しゅきすぎる………!(語彙力の低下) (2019年3月23日 22時) (レス) id: 15c63c8bdd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:作戦隊長 | 作者ホームページ:tp://  
作成日時:2019年3月22日 22時

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