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佰漆拾捌頁─ト或ル森ノ中デ─ ページ45

「......誰だ、手前」




ヨコハマの大海が見下ろせる森の外れ。

黒帽子を被った青年────中原中也は、自身が此処に来た理由となった女性が見知らぬ男に支えられている光景を目撃していた。


男の髪は胸に届くほどに長く、赤く毛先が紫に染まった髪を首の後ろで一つ括りにしている。

女のような見た目に中也は眉をひそめた。

声を聞かなければきっと男だとは判らなかっただろう。


僅かに流れた間の後、男は自分に声をかけられたのだと気づき目を先頭にして後ろを振り向いた。




「ん?あぁ、見たことある顔だね。すまないけど今急いでるんだ。時間が惜しい」

「俺は手前が誰だって聞いてンだよ。時間がねェなら早く答えろ」




自身の望む答えを云わない男に中也は憤りを募らせる。

抑えているつもりなのだろうが声にも顔にも苛つきが表れていた。




「答えたところで今度は何してるんだって聞くんじゃないの?名前を聞いただけで何処かに行ってくれるとは思えないし」




彼は手首を傷めないように地面に膝をつき、彼女の躰に負担がかからないよう気遣う。

緊張感が感じられないゆったりとした口調。

しかし急いでいるのは本当らしく、中也には一切目を向けずに第一ボタンを外し、鞄から布を取り出したりと忙しなく手を動かしていた。




「でもまぁ此処でのことは他言無用でお願いしたいし、少し僕に付き合ってもらうよ。中原中也君」




脅しのつもりか彼はAの首元に手をやる。

敵意があるのかは判らない。

しかしそれだけで中也は迂闊に動くことが出来なくなる。


自身のことを知っているにも関わらずこんなにも落ち着いているということは、この男も異能力者の可能性が非常に高い。

それもどういうものなのか判らない時点で警戒は解けない。

見えない鎖に縛られ、何も出来ない己を悔やむように中也は強く歯を食いしばる。

それを見た男性は、ほぅと微かに驚きが含まれた声をもらした。

そしてそれから口元に笑みを浮かべ、何処か満足気な表情を浮かべる。




「僕の名前は志賀直哉だよ。ま、どうせ忘れるんだけど」




次の瞬間、其処には誰も居なかった。

続編ですね。ちょっとしたお知らせも。→←佰漆拾漆頁─ソノ光ノ裏デ─


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作品ジャンル:アニメ
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まんじゅうねこ(プロフ) - 煉華☆さん» ゲームでの名前は其の侭「まんじゅうねこ」です!ありがとうございます! (2018年11月2日 17時) (レス) id: 5748b81071 (このIDを非表示/違反報告)
煉華☆(プロフ) - まんじゅうねこさん» 初めまして、こんにちは(*^^*) フレンドは大丈夫ですよ!「4555 8960 3456」←こちらでいけると思うので、ゲームでの名前を教えていただけると助かります。コメントありがとうございました! (2018年11月2日 17時) (レス) id: b70d4562c3 (このIDを非表示/違反報告)
まんじゅうねこ(プロフ) - すいません、文マヨのフレンド申請を送っても良いでしょうか……。 (2018年11月2日 16時) (レス) id: 5748b81071 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - ありがとうございます!風花楓音で申請しました! (2018年9月30日 10時) (レス) id: cdcff714b1 (このIDを非表示/違反報告)
煉華☆(プロフ) - のんさん» こんにちは!大丈夫ですよ(*^^*) コメント欄にIDが書いてあるので、申請して貰えたら嬉しいです。 (2018年9月24日 14時) (レス) id: b70d4562c3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:煉華 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/renka_kazetani  
作成日時:2018年7月14日 17時

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