【文豪ストレイドッグス】元.ポートマフィアの指導者 part 7

佰伍拾陸頁─白鯨内戦闘 5─ ページ21

瞬間的に縮まる、敦と制御端末との距離。

敦は自分が先に手に取ることを確信していた。


しかし────




「3(スリー)｣




その行動を読んでいたフィッツジェラルドが敦の動きに合わせて腹部に膝蹴りを入れたのだった。

想像以上の威力に敦の躰は押し返され、勢いよく壁へと打ち付けられる。

敦の背後の壁は衝撃を吸収しきれずにボロボロと壊れていた。




「秘訣その三、“好機(チャンス)を与えられた人間の行動は読みやすい”。まぁ、これは彼女には通用しないのだがな｣




膝と手をつきながら血を吐く敦に、フィッツジェラルドは片手でネクタイを緩めながら余裕そうにする。

敦は歯を食いしばり、何とか立ち上がろうと床を踏みしめる。

ふらっとよろめきつつも立ち上がる。

それを見てフィッツジェラルドは感嘆の声をもらした。




「ほう。今の蹴りでも倒れんか。大したものだ...運命に抗い、血を吐いてもなお立ち上がる少年。俺の若い頃を思い出す。いいだろう。一万では失礼だったな｣




フィッツジェラルドはそう云い、懐から大量の紙幣がまとめられた一つの札束を取り出す。




「これは俺が所有する有価証券だ。総額十万ドル｣




十万ドル────日本円で云えば約一千万円もの大金を、あろうことか彼は空中にばらまいた。

その行動は見た者全てに彼にとってはただの紙切れでしかないのだという事を感じさせるのに充分すぎるもの。

ひらひらと無数の紙が舞う中、その一つに変化が生じた。




「俺の異能、紹介がまだだったな...？｣




異能力《華麗なるフィッツジェラルド》

地面に着く前に次々と光となって消えていく紙幣。

それに応えるように彼の躰にも変化が現れ始める。




「これが俺の異能────消費した金額に比例して身体能力を強化させる！｣




急激に膨れ上がる威圧感とも呼べる何か。

それを肌で感じた敦は思わず目を見開き、動きを止めてしまった。


────刹那、敦の腹部を強烈な痛みが襲った。

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