41.血の熱さは業火のように�� ページ42
−no side−
A「私と、契約してください。」
言い切ったAをローがキッと睨む。
ロー「お前、分かってんのか！契約はメリットだけじゃねぇんだぞ。」
A「分かってます！」
ローの声にも彼女は引かずに力強く言い返す。
A「今助かるには、皆を助けるにはそれしかありません！それに、貴方の船に乗った時から私の命は貴方の物！貴方の死は既に私の死です！裏切るつもりもありません！」
何が問題だと言うんですか！？と珍しくローに怒りの感情を剥き出しにするA。
ロー「…お前、失われるのは分かってんだろうな。」
A「だから何ですか！？」
(ジャラッ
ローの手が手錠の音を鳴らしながらAのウィッグを外し、Aのダークオレンジの髪がふわりと重力に抗わずに流れていく。
ロー「大切なんだろ、この色」
「命と髪なんて比べるまでも無いです」
「そんなことで契約を断ってたんですか」
そんな文句を浴びせてやろうと彼女は口を開いたが、出てきたのは涙と愛しさだった。
A「(死の外科医が聞いて呆れる。なんて優しい人なんだろう。)」
母と同じダークオレンジの髪と瞳。
彼女にとっては、名前以外で唯一の親の形見だ。
A「確かに大切です。でも、私は貴方のために戦いたいんです。それが私の望み…。
皆を守る為なら、悪魔にでもなりましょう。」
そう言って彼女は今までで1番綺麗な笑顔を見せた。
それを見てローもフッと笑った。
ロー「…そうか。なら、俺の為に力を使い、俺の為に闘え。俺についてこい、A。」
(ブチッ
ローは右手の親指の腹を歯で傷付け血を出した。
そしてその指をAの唇に押し付けた。
ロー「これでお前は俺の物だ。」
(ゴクッ
ローの血がAの中に飲み込まれた。
A「(ッ！熱い…でも、力が漲ってくる！これが…契約の力！)」
指先1本1本にまで伝わる力で彼女は姿を変えていく。
縄は引きちぎられ、黒い毛並みが炎によって輝き金色の獣の目を持つ狼がローの前に現れた。
狼は、まるで王の前の騎士が跪くように身体を伏せて厳かに言葉を紡いだ。
A「命令を。我が主人。」
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作者名：かみつれ | 作成日時：2020年5月22日 16時
