【ONEPIECE】月が綺麗だと、そう言って2【トラファルガー・ロー】 (ページ30)

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29.あの夜の思い出① ページ30

－Aside－

呪い(仮契約)を掛けられて約数ヶ月。
私は限界を迎えていた。

両親は死に、誇りだった髪と目の色は変わり、悪魔よ去れ、と知らない人々に石を投げられる。

泣いても助けてくれる人はいない。命令のせいで死ぬことも許されない。

ただただ人形のように感情を閉じ込めて日々を過ごす事しか出来なかった。

そんなある日、領主がどうしても外せない用事があると、狼に変身させられた私を戻すこともせずに慌てて出ていった。

狼だからと言って何か変わる訳でもなく部屋から出ない時を過ごすが、

この日は違った。

私の部屋の扉は領主に呼ばれた時とご飯の時にしか開かず、毎晩扉が外から閉められるのだが、

その日は鍵が閉まらなかった。

誰かが忘れていたのか、新人が閉めることを知らなかったのかは分からない。

A「逃げなきゃ…」

逃げてどうするのか、どうやって島の外に出るのか、そんなことも考えずそっと扉を開けて屋敷を抜け出した。

まあ、乗れそうな船が都合よくある訳はない。

私は海まで走ってそれを知った後、見つかる前に帰ろうと人目につかない森を抜けることにした。

そこで彼に出会った。

初めて見た時彼は森の獣に襲われそうになっていた。

私は咄嗟に彼の前に飛び出し獣たちを追い払った。

少年は大丈夫かと振り返ると少年は苦しそうに蹲っていた。

少年「大丈夫、だ。はぁ、すぐ、落ち着く、から…はぁ、」

焦って周りをうろうろする私に少年は息を荒らげながら言う。

多少落ち着いても、寒いのか少年の体は震えたままだ。

私は少年の体に巻き付くようにくっついて座った。
私の体を背にして座る少年は少し暖かくなったからかほっと息をついた。

少年「ありがとな」

少年の優しい笑顔に心が温かくなる。

A「(こう思うってことは…私、まだ人間なんだ…。人形なんかじゃ…ないんだ。)」

こちらこそありがとう。
そんな気持ちを込めて鼻で少年の頬を撫でた。