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「新しい人形の服なら、今度僕が見繕ってあげる」
「え? いいの? 本当に? わあ、嬉しい。累が選んでくれた服ならきっと似合うもの。とっても嬉しいわ。約束よ?」
「うん」
「『破らない?』」
「家族との約束は破らないよ」
機嫌を直して笑顔で言う重に累は頷いて。にこにこと上機嫌に笑う彼女は踊る様に足踏みをした。
「そうと決まれば、早くその子を捕まえて来るわ。待ってて累」
「うん、待ってる。いってらっしゃい」
片手に簀巻きの布切れを抱いた彼女は累に背を向けて、女がいると言われた方へと向かって行く。その途中でそうだ、とぴたり足を止めた。
「ねえ、累」
「どうしたの重」
くるり、とその白い髪を靡かせて、たっぷりの浅葱色のまつ毛を持ち上げ、その白い瞳を彼に向けた。
「────家族ごっこは、楽しいかしら?」
「……………………重のそういうところ、僕は大嫌いって言ったでしょ」
ズズン、と隣の木が倒れて重たい音を立てた。こちらに手を伸ばした累は目を大きく見開いてさっきとは真逆の空気を纏い、重に殺気を向けている。その証拠が今倒れた木だった。彼の伸ばした硬く鋭い糸が、空に伸びる大きな木を一瞬にして倒したのだ。
「短気は損気って言うわ、累。ただの冗談よ」
一切の動揺を見せず且つ木が倒れるその瞬間も微動だにしなかった重は、凍りついた空気が心地よいと言う様に笑っていた。
そして。先ほどの言葉を一つ残し、軽やかな足取りでそのまま彼女は薄暗闇の中に消えて行く。
その背を見ながら、残された累は感情のままにまた一本木を切り倒した。その音に混じって、鈴の転がる様な笑い声がした気がした。
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ユズヒ(プロフ) - nogiruka03161さん» コメントありがとうございます! 絶世の美少女とはなんと嬉しいお言葉。夢主が聞いたらドヤ顔で調子に乗りますね。その認識で大丈夫です!それ故に言葉遣いや所々の残念さが目立つというか際立つというか玉に瑕……みたいな感じです! (2019年10月7日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
nogiruka03161(プロフ) - 前から思っていたのですが、夢主の美少女レベルはどれくらいなんでしょうか。主要人物は、禰豆子ちゃん、胡蝶姉妹、カナヲ、蜜璃ちゃん、鬼側なら堕姫と、美少女や美人が多いですよね。善逸の過去の発言や鬼に容姿で目をつけられるあたり絶世の美少女と認識してます。 (2019年10月7日 21時) (レス) id: 5ed8b171b4 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» ありがとうございます!個人的に善逸との絡みは私も書くの好きなのでそう言って頂けるととても嬉しいです!鴉は焼き鳥になりました。 (2019年10月5日 19時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
夜美 - 巫女ちゃんと善逸の絡み好き。善逸と残ってあげるの今まで見たことないからおぉこれいいなって思った、デス。(ちょっと鴉風)あと善逸の優しさと巫女ちゃんの赤面好きそれをからかう鴉も (2019年10月5日 9時) (携帯から) (レス) id: 17b8cf45ac (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» ありがとうございます!手紙だとあいつは大体おちょくってくる奴です。そうなんですよ!絶対可愛いなと私も書きながら思いまして!!絶対!!可愛い!!! (2019年9月22日 10時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年9月16日 16時