第8話 事の真相と情の話 ページ36
「……なんて?」
「じゃから、儂。お主を、あの村の入り口に置いたの」
そんな衝撃すぎるカミングアウトを聞いたのは、巫女になって四年目の冬のことだった。
なんだかんだ気に入っているセーラー服を身に纏っての素振り稽古の最中、経緯は忘れたけど私の今世での生い立ちの話になったのだ。
一通り話し終えて返ってきたのが、その言葉だった。
「お主あれじゃろ、あの若い夫婦の女の方が抱えとった赤子じゃろ?」
「え、え? いや、え? 女……?」
「お主がさぁ、持っとった簪。ほら、嫁にされた時に持っとったやつ」
「あぁ、あれ。……いや嫁になった覚えはないから」
簪。あの藤の花のやつだ。白と紫のやつね。確かにあれは、嫁入り……うおおこの言葉使いたくないなあ!!
供え物……これも不本意。生贄……まだマシか。生贄にされた時に、これだけはと一緒に持ってきたものだ。今も小屋の窓際にある竹の筒に、陽の光を浴びながらきらきらと輝いている。
「あの白い方、女がしとった。あとお主の髪と瞳の色と魂。あの時儂が村に置いてきた赤子とそっくりそのままじゃ」
「ちょちょちょ、待った待った待った。え、なに? うん? え?」
「儂、お主の命の恩人」
思わず素振りをやめてしまったのは仕方ないと思う。だってなんだこのカミングアウト。誰が予想したのよ。え、なに、予想できてたの? ……マジ??
「一足な、遅かったのよ」
神様は顔を下にやって、ぽつりとため息混じりにそう呟いた。
「儂が来た時にはな、男の方はもう生き絶えとった。女もな、もう死ぬ間際でなぁ。襲った鬼を斬った後に、女が儂に話しかけてきた」
「……なんて」
「この子を頼む、と」
そう言って、息も絶え絶えの中、女……母は、私を神様に預けたのだそうだ。
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ユズヒ(プロフ) - 夜美さん» もうそんなに経つんですねぇ……。長いようで短い一年でした。いつもありがとうございます!映画公開、円盤発売後からも再開するので、またよろしくお願いします!! (2020年7月11日 9時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
夜美 - 気づけばもう神様の巫女は一周年ですね。本編の区切りもついたのもタイミングバッチリですね!今までもこれからも、この作品が大好きです!応援してます (2020年7月11日 9時) (携帯から) (レス) id: 17b8cf45ac (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - かなでさん» いえいえとんでもないです!ご指摘頂けたおかげで描写抜けの事にも気付けたので、私としてはありがたい限りです! わー!ありがとうございます!!迷惑なんてことないですよ!これからもよろしくお願いします! (2020年4月29日 13時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
かなで(プロフ) - ユズヒさん» そうだったのですね……!私の理解が足らず、申し訳ないです。。文章の書き方が凄く好きなので、作者様の事を推して行きたいと思ってます…!ご迷惑でなければ、仲良くして下さると嬉しいです……! (2020年4月29日 2時) (レス) id: 58d60c86cb (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - かなでさん» なので、文字にしてある構えは抜刀をする際のものではなく、“抜刀をした後の構え”の描写となっております。もし、「いやいやそれでもやっぱりおかしいな…?」となったら遠慮なく仰ってください!ご指摘ありがとうございました! (2020年4月28日 20時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年7月11日 20時