【鬼滅の刃】神様の巫女 拾弐

＊ ページ10

ぞくり。



知った感覚。覚えのある視線。この肌に纏わりつくようで、それでいて貫いてくるようなこれは、これ、は。


────鬼の視線。


バッと首を振り視線の方を向く。沢山の人の壁。隙間を見つけて目を凝らすも、それらしい存在は見えやしない。どこ。だって絶対にいる。どこにいるの。せめてもう一度、視線を向けてくれたら……。


「おい、なにしてる！」


必死に鬼を探していたら、小声で隣の男に叱責された。


「こら止まるな！ 列が乱れるだろうが！」

「え、あ」


私の後ろに並ぶ人は少し顔を顰め、周りの人達も私を不思議そうに見ている。なにやらざわざわと騒つく声もしだした。
視線全てが気持ち悪い。でも、近くに鬼がいるのは変わらない。何とかして鬼を見つけ出したいけど、人が多すぎて見つからない。あの人垣の中に飛び込んで行けば探せるかもしれないのに、見つかるかもしれないのに、隣を歩く男に腕を掴まれてそれも叶いそうにない。


「ほら歩け！ 泡雪花魁の顔に泥を塗るつもりか」

「いやでも」

「い い か ら ！」


言われて、後ろの人から軽く押されて強制的に歩かされる。それでもなんとか視線だけで鬼を探すもその姿は見当たらない。
……やらかした。見失った。姿を捉えたわけじゃないけど、確実にあの場にいたのに。視線も感じない。辺りを探してもどこにもいない。この状況で唯一頼れる(超不本意)クソ美丈夫がいないかと探してみても、あいつもいやしないどころか視線も感じない。マジで肝心な時に役に立たねぇクソ美丈夫だなおい……！！

結局、それ以降目的地に着くまで鬼からの視線を感じることも無く、クソ美丈夫の姿を見ることもなかった。
本当の本当にクソ美丈夫に殺意が湧いた。

第103話 関わってはいけない事→←＊

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