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「泡雪花魁」
「悪いことは言わないわ」
まるで飛び出た釘を叩くように、泡雪花魁は話を促そうとした私を制した。視線が絡む。
「遊女としてこの街で生きていくのなら、あまり深く知ろうとしては駄目よ。ここはあなたが思っているよりも怖い場所。誰かが必ず助けてくれるわけじゃないの。泡雪だって、あなたを守れるかわからない」
とても真剣な表情で、視線で、そう訴えられて思わず息を呑んだ。美人のこの手の表情にはなんとも言えない気迫がある。美人だから、っていうのもまああるだろうけど、それ以上に、彼女の想いが強いのだろう。
──つまり、彼女にそう想わせる何かが、ここにはある。
「……もしそうだとしても、私は」
「いい加減にしろ」
イラついたように私の言葉を遮ったのは、他でない燕君だった。さっきからずっと私にイライラした視線を送ってきていたけれど、どうやら我慢の限界らしい。
「泡雪花魁、俺たちはこれで失礼します。ゆっくり休んでください」
ぐいっと腕を掴んできたと思ったらそのまま無理矢理立ち上がらされて、部屋の外に引っ張られていく。抵抗しようにも着物に慣れてないせいか上手く行かない。っていうか容赦がないな!?
「ちょ、ちょ、燕君!」
「気安く呼ぶな」
「じゃあ何と呼べと!?」
「燕、燕」
襖を開けた燕君の足がぴたりと止まる。振り返った彼と泡雪花魁の視線が絡んで、一瞬の間。
「お願いだから、虐めないであげてね。わざとじゃないのよ。分からないだけなの。だから、優しくしてあげてね」
「…………分かってます」
ぴしゃりと閉じられた綺麗な柄の襖。
口を噤んで俯く彼の表情は、見えなかった。
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ユズヒ(プロフ) - 星さん» コメントありがとうございます! そして大変長らくお待たせ致しました! 更新並びに続編に移行致しましたので、ぜひお読み頂ければと思います!! (4月2日 2時) (レス) id: 53b9d42206 (このIDを非表示/違反報告)
星 - ...よし、もう一周見てくるか! (4月1日 12時) (レス) @page46 id: 807ae8eba5 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - maiさん» コメントありがとうございます! わーー!!頑張ります!!!! (10月13日 22時) (レス) id: 53b9d42206 (このIDを非表示/違反報告)
mai(プロフ) - 更新楽しみにしています😭 (10月12日 13時) (レス) @page46 id: bfff11b4c7 (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 青白の狼さん» コメントありがとうございます!そして録の更新を怠ってしまい申し訳ありません…!先程、録を更新してまいりました。夢主を指名した鬼の設定はまだ明かせませんが、今までに出てきた鬼や人の設定を追加しておりますので、お時間ある時にお読み頂ければ幸いです〜! (6月5日 23時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2022年11月14日 3時